2021年10月18日(月)

<月曜放談>認知症は予防できる 社交性ある活動に高い予防効果 医療科学研究所理事長・江利川氏寄稿

江利川毅氏

 私が理事長を務める公益財団法人医療科学研究所は、事業の一つとしてシンポジウムを開催している。昨年9月は「新型コロナウイルス」をテーマに、尾身茂先生に座長を、厚生労働省、日本医師会、地方自治体、感染症専門家、製薬業界代表の方々にパネリストをお願いして開催した。地方自治体を代表する形で大野埼玉県知事にお忙しい中をお引受けいただいたが、ご意見や分析が整然としていて、会場参加者から高い評価が寄せられていた。

 10月8日に「認知症予防の最前線」というテーマで、わが国の代表的な6人の医師・研究者によるシンポジウムを行った。認知症は85歳、90歳と高齢になるにつれ発症率が高まり、誰もがなりたくないと思っている病気なので、その概要をご紹介したい。

 認知症の予防には、1次予防=発症させない、2次予防=発症を遅らせる、3次予防=発症しても進行を遅らせる、の3段階がある。予防が注目されるようになったのは、(1)危険因子が分かってきた(2)前段階が分かってきた(3)発症前での予防活動が重要ということが分かってきたからである。

 認知症発症の20〜25年前からアミロイド蛋白の異常が始まり、発症までのプロセスは、(1)健常(2)主観的認知能力低下(物忘れの自覚があるが、周囲に気づかれない。仕事や家事に支障はない)(3)軽度認知障害(周囲が気づき始めるが、仕事や家事にほとんど支障はない)(4)認知症(アルツハイマー病、血管性認知症など)と、四つの段階に分けられる。昨日の夕飯に何を食べたか思い出せないのは、食べたことは覚えているので認知症ではなく、認知症になると食べたことを忘れてしまうのである。

 (2)および(3)の段階は、予防活動によって進行の停止あるいは回復が可能とのことである。特に血管性認知症の予防には、糖尿病や高血圧などの改善、禁煙などの努力が必要である。アルツハイマー型の認知症については、週3回少し汗ばむ程度の運動を頭を使いながら行う(「コグニサイズ」と言う。例えば早歩きしながら100から7を順々に引いていく)と、予防効果が高いそうである。楽器の演奏、ゲーム、ダンス、ゴルフなども良く、社交性のある活動は効果が高い。

 認知機能の低下は、身体的・精神的健康状態の悪化、社会的孤立、経済的困窮と密接に関連している。独居の超高齢者はリスクが高く、本人の自覚や周りのサポートが大事となる。

 予防のための取り組みだけでなく、認知症になってしまっても共に暮らせる社会を作ることも課題である。本人の視点に立って、生活の継続性に必要な社会的支援を統合的に調整して、その利用・提供を可能とする地域社会のネットワークを作る、そういう取り組みが、予防の取り組みと並行して、各地で展開されることを期待したい。

 来月初旬から、医療科学研究所のホームページにシンポジウムの動画と概要をアップします。是非ご覧ください。

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