2020年11月13日(金)

<県民の日>経営知識ある乃木坂46新内眞衣さん、埼玉の偉人「渋沢栄一」に驚き 大河ドラマ館行きたい!

埼玉応援団(コバトン倶楽部)の乃木坂46・新内眞衣さん(埼玉県出身)
公益財団法人渋沢栄一記念財団・渋沢史料館館長 井上潤さん
「埼玉の偉人、渋沢栄一」を学ぶ乃木坂46・新内眞衣さん

 井上 2024年に新1万円札の顔になることが決まり、また、来年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公にも選ばれてから急激に世間から脚光を浴びるようになりました。これまで渋沢栄一が注目される時って、わりと世の中が不安定な状況のことが多いんです。倫理観など人として正しい道を歩むことを説いた栄一の精神が取り上げられる頻度は、そういった時代のバロメーターにされることが多い。今回は純粋に明るい話題で国民から注目され、とても有意義なことだと思います。
突然ですが、新内さんは企業のCSR(社会貢献活動)って言葉を聞いたことはありますか。

 井上 はい、栄一は経済界のみならず医療、福祉、教育など様々な分野に貢献した人物なんです。当時では91歳というとても長生きしましたから、結果的に色んな事業に関われたってことかもしれませんが、ただ、栄一は会社一つひとつを自分の利益のために独占しなかった。
まずは産業自体を世の中に幅広く定着させて、事業を永続させることが一番の目的でした。だから自分自身の生活が豊かになることは、ほとんど考えなかった。むしろ、世の中全体が豊かになることを誰よりも望んでいたと言われています。
いま不況や度重なる自然災害、また新型コロナウイルスなど感染症の流行でとても厳しい時代です。そういった世の中に一筋の光を差し込んでくれる強いリーダー像、現代人はそれを栄一に重ね合わせているのかもしれません。

 井上 そう。良く知っていますね。当時、「第一国立銀行」と言って、国立銀行条例に基づいて設立されました。総監役(今でいう頭取)という一番トップの立場で会社全体を取りまとめていたようです。
その次に着手したのが製紙業。栄一は幕末にフランスに渡り、「新聞」という新たな情報ツールに出会い、強い関心を示したと言われています。
前日に国王(皇帝)が話したことが翌日に記事として紙面に載っている、しかも各家庭に配られている。「こんな素晴らしい情報ツールは日本にはない。これは日本の文化度を高める大元になるのではないか」と。そこで日本でも西洋紙(新聞用紙)を作ろうと思ったわけです。それを全国各地に広げるため、工場用地として選んだのが、いま私たちの史料館がある東京都北区王子(地区)です。

 井上 そうですね。少し言い過ぎかもしれませんが、新内さんの考えがあながち間違っているとは言い切れません。
元をたどれば、これもか、これもかって。ひょっとしたら、栄一が世間から注目されない要因は、様々な分野に関わりすぎて、何が栄一の功績なのか、パッと頭に思い浮かばないからかもしれません。

 井上 栄一が事業を立ち上げる際、いつも大切にしていたのが、決して自分一人だけのために進める事業ではないということ。常にそのことを念頭に置いて、世のため、人のため、「公益」をすべての根幹に置いていました。
そして会社経営する上で、一番大切にしていたのが「人財」。特定の人物がずっと経営を続けられるわけではないので、事業を受け継いでくれる人をいかに育成するか。優秀な経営手腕を振るえるリーダーだったり、実務を完璧にこなすスタッフだったり、投資してくれる企業(人物)など、そういった人と人とのネットワーク作りにも長けていたと思います。
それに加え、先々を見通す「先見性」。当時の経営者は数字ばかりで職場環境の改善には全く目もくれませんでしたが、栄一は違った。その会社で何年働けばどういう立場になるのか、給与体系や退職金支給といった今では当たり前の制度にもいち早く着手しました。
それが人々の労働意欲につながり、結果的に会社の業績が上がって、その産業全体が発展する。栄一は驚くほど日本の将来を考え、未来を見据えていたんだと思います。
ただ、すべての事業が順調にいくとは限らない。苦しい局面に立たされても、それを耐え抜く力が経営者には必要であると。それを栄一は「絶大なる忍耐力」と表現していますが、会社経営の必須条件ですね。

 井上 経営理念という意味では稲盛和夫さん(京セラ、第二電電創業者)や松下幸之助さん(故人・松下電器産業創業者)などが挙げられますが、ただ、栄一と同じだったかは分かりません。また、現在の経営者の中には栄一以上に優れた経営手腕を持つ人財がいるかもしれませんし。でも栄一のように、会社経営だけじゃなく、日本経済全体の“世話役”としてここまで生涯を捧げた人物は後にも先にもいないと思います。
ここで、栄一について面白いエピソードを一つ。あるとき、栄一が立ち上げた事業を乗っ取るために、とある人物が送り込まれてきた。普通なら頭に来ますよね。でも栄一はその乗っ取ろうとした人物の才能でさえ何か社会に役立てられないかと、適材適所の役割を与えてしまうんです。
本当に経営の才覚というか、人を見抜く力があったんだと思います。

 井上 栄一が記した「論語と算盤」は、新内さんのような若い世代の方にこれからの時代を生き抜く術(すべ)を学んでいただける本だと思います。全90項目にまとめられ、どこを読んでも参考になる言葉ばかり。今回、その中の2つを紹介しましょう。
まず一つ目は『日々に新(あらた)にしてまた日に新なりは面白い、すべて形式に流れると精神が乏しくなる、なんでも日に新の心懸(こころがけ)が肝要である』。これは、日々決められたことを機械的にこなすのはあまりにも面白くない。毎日新たな気持ちで新しいことにチャレンジしよう、ということです。

 井上 当館では長年の調査研究の蓄積や新しい資料の発見で、新たな渋沢栄一像を皆さまにお届けできるよう様々な企画を考えています。新型コロナの影響でリニューアルが約7か月半延びてしまいましたが、これまでお見せできなかった渋沢栄一の生前の姿を動画で随所にてご覧いただけるようになりました。また、栄一が一年ごとにどんな事業に取り組んだのかひと目で分かるよう新たな手法で展示します。
新1万円札に決定したときは、ニュースで日本を代表する実業家と紹介されていましたが、栄一は単純に実業家の枠ではくくれない、社会のオーガナイザー(多くの人を集め、組織を作り上げる人)。その姿をぜひ感じ取ってもらいたいです。

 新内 今年から来年にかけては、さまざまな渋沢さんとの出会いを通じて、人間として大きく成長できる“学びの季節”になりそうですね。
県民の皆さまにも渋沢史料館など渋沢さんゆかりの場所を訪れてほしいですし、私もぜひ足を運びたいと思います。
今日はとても勉強になりました。ありがとうございました。

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