2018年1月21日(日)

楽にしてあげたい…狭山で末期がんの妻を夫が切りつけ 福祉関係者らに失望感「抱え込まずSOS発信を」

夫婦が暮らしていた団地=狭山市内

 狭山市で先月、妻の病気を苦にした62歳の夫が包丁で61歳の妻を切りつける殺人未遂事件が発生した。妻は間もなく死亡し、逮捕された夫は「末期がんの妻を楽にしてあげたかった」と犯行の動機を語った。団地で暮らす家族に起きた惨事。「抱え込まずにSOSを発信してほしい」。福祉関係者らにやり場のない失望感が広がっている。

 先月19日午前0時半ごろ、狭山市内の団地で、無職の夫が妻を殺害しようと首を包丁で切りつけた。妻は病院で死亡が確認された。夫は自ら110番し、殺人未遂容疑で現行犯逮捕され、その後、鑑定留置されている。

 夫婦が暮らしていたのは17棟が並ぶ団地の一室。30代の長男と同居し、同じ団地に親族も居住していた。妻は乳がんを患い、警察官が駆け付けた際、布団の上に寝かされ、ひどく痩せていたという。

 団地は約330世帯が暮らし、築40年以上で住民の高齢化がみられている。民生委員だけでは高齢者への訪問活動が追いつかず、月1回、住民ボランティアが70歳以上世帯や体が不自由な独居者ら約120世帯を巡回している。

 同ボランティアの70代男性は「ボランティア間で情報交換はしている。ただ(今回の事件は)60代世帯ということもあり、夫婦の悩みに気が付かなかった」と肩を落とす。団地の管理組合は2年ごとに住民の家庭内調査を行っているが、夫婦方は20年近く、夫の1人暮らしと申告していた。管理組合関係者は「情報が表に出てこない以上、支援しようにもできない」と、やるせない表情を浮かべる。

 狭山市長寿安心課の志村聖司課長(介護保険担当)は「残念な事件」と事態を重く受け止める。介護保険を利用できるのは65歳以上だが、回復の見込みがないと医師が判断したがん患者らに対し、40歳からの利用が認められている。市によると、妻は事件直前までケアマネジャーが介在した福祉サービスを受けていた。志村課長は「サービスを提供する側の“気付き”も重要になってくる」と指摘する。

 夫は支えを求めに市役所を訪れることはなかった。「抱え込まずSOSを発信してほしい。そうすれば、どんな形でもつながっていくはず」と志村さんは呼び掛ける。

■医療機関に相談窓口

 がんの療養や生活面での不安など、がん医療に関する質問や相談に応じる「がん相談支援センター」が、県内の医療機関に置かれている。がんに詳しい看護師や生活全般の相談に対応できるソーシャルワーカーが受け付ける。

 県のがん診療連携拠点病院でがん相談支援センターを設置しているのは、県立がんセンター(伊奈町)▽自治医科大学付属さいたま医療センター(さいたま市大宮区)▽埼玉医科大学総合医療センター(川越市)▽春日部市立医療センター▽深谷赤十字病院など13機関。来院か電話で、無料で相談を聴いている。

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