2017年3月29日(水)

46人死亡…昨年、県内の困窮者宿泊所 今後増の可能性、その背景は

 生活困窮者に対して、NPO法人などが一時的な滞在の場を提供する県内の無料低額宿泊所で、昨年1年間に少なくとも計約46人の入居者が死亡していることが、埼玉新聞の実施した市町村への調査で分かった。60歳以上の入居者が6割超に上り、入居期間も長期化していることが背景とみられる。県はガイドラインで入居期間を原則1年と定め、事業者に転居支援をするように求めているが、専門家は行き場のない高齢者の「終(つい)のすみか」として利用される恐れがあると指摘している。

 県によると、昨年4月時点の県内の宿泊所は56施設で、入居者数は2573人。約98%が生活保護受給者でほとんどが男性だった。平均年齢は59・2歳。60歳以上が6割、70歳以上が2割に上る。

 県はガイドラインで入居期間を原則1年と定め、事業者に対して安定した住まいへの移行を支援するように明記。だが、入居期間は平均3年1カ月で、7年以上は約2割と長期化している。

 県社会福祉課の担当者は高齢・長期化の背景として、「自活できない人が多く、安住してしまう傾向がある」と分析。身寄りのない高齢者を受け入れる施設が不足し、全体の約8割は福祉事務所の紹介で入居しているという。

 県内の各福祉事務所やさいたま市によると、昨年1年間で約46人が入居中に死亡退所した。さいたま市の16人に次ぎ、戸田市の7人、川口市の5人、草加、越谷、所沢市の各3人が続いた。さいたま市は所管する15施設から回答を得た数字で、入院後に一定期間経過して死亡したケースなどは数に入っていない。同市は本年度、初めて死亡者数を調べたとしており、「入居者の高齢化で今後、死亡者が増える可能性はある」と話した。

 一部の無料低額宿泊所では生活保護受給者を囲い込み、保護費の大半を受け取っているなど、「貧困ビジネス」の温床となっている。県社会福祉課の担当者は「無料低額宿泊所は届け出制で、業者側の専門性や資格を定める基準はなく、悪質な業者も入り込みやすい。立ち入り調査をするなどして指導している」としている。宿泊所の開設を許認可制にするなど、運営基準を強化するよう厚生労働省に要望を続けているという。

 貧困問題に取り組むNPO法人ほっとプラスの藤田孝典代表理事は「無料低額宿泊所に入ったら『終のすみか』としてそのまま放置されてしまう現状がまん延している。転居する場合には保証人を求められる場合も多く、低所得で身寄りのない人の行き場を探しにくい現状がある」と指摘。その上で、「一時的な場であることを念頭に、ケースワーカーが半年から1年の間で転居させるという倫理観で取り組む必要がある」と話した。

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