2016年3月22日(火)

かまどの現存は全国唯一 川越の旧栄養食配給所、市の調査で判明

旧川越織物市場敷地内にある旧栄養食配給所=川越市松江町2丁目
旧栄養食配給所1階住居で、畳の下から見つかったかまど

 川越市松江町の旧川越織物市場敷地内にある旧栄養食配給所が、大正から昭和初期にかけて国策で全国67カ所に設置されたものの一つで、建物が現存しているのは川越を含めて2カ所しかないことが、同市の調べで分かった。さらに、女工らに提供する食事を作るかまどが全国で唯一残されていることも判明。市は「当時の姿をそのまま残す遺構。文化的や社会的意義が極めて高い遺産だ」としている。

 栄養食配給所は織物工場の労働者を確保するために、国策として全国各地に設置された。旧厚生省労働局が1938年に発行した「工場食の改善と工場栄養食共同炊事場」によると、配給所は全国14都府県に計67カ所に置かれた。埼玉県内が最も多く、川越のほか、行田や飯能、川口など計21カ所に設置されていた。

 川越の配給所は木造で一部2階建て約177平方メートル。川越織物市場が建設された10年に事務所として建てられ、34年に増改築して、配給所として利用された。配給所は敗戦の年の45年に閉鎖され、その後は住宅として使用されていた。

 2001年、旧配給所は旧織物市場の建物とともに取り壊してマンションを建設する計画が浮上。取り壊しに反対する周辺住民の要望を受けて、市開発公社が敷地を約3億8千万円で買収。建物を寄贈された市は05年、織物市場の建物2棟と同配給所1棟を市文化財に指定。建物の修復や保存、調査を行ってきた。

 同市は14年、配給所があった全国の自治体などに現状を照会。配給所の建物が今でも残されているのは、同市と東京都江東区深川の2カ所だけであることが分かった。

 また、旧配給所内にはかまどが三つが確認されていたが、隣接する部屋の畳をはがした際に新たにかまど四つが見つかった。かまどの大きさは直径90センチ以上のものも。

 織物工場の経営者の子孫に話を聞いたところ、「配給所ができる前は各工場に賄いがあった。配給所が設置されてからは朝、昼、晩の3食が配給され、女工らは魚入りのライスカレーなどハイカラな食事を食べていた」という。

 市は配給所について「整備を行った後、見学用の施設として公開したい」と話している。

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