2015年9月25日(金)

災害対応、自治体に差…難しい情報提供「なぜ放送ない」「うるさい」

豪雨で冠水し、車が立ち往生した道路=10日、越谷市内

 今月上旬、大きな爪痕を残した関東・東北水害。茨城県常総市では鬼怒川の堤防決壊地点に最も近い地区に避難指示を出していなかったが、県内でも避難勧告を含む情報提供の内容や手段は各自治体が判断している。今回も防災行政無線を放送しないなど自治体によって対応に差が表れた。スマートフォンなどを持たない家庭に情報を有効に伝えられる防災無線だが「正確な情報が伝わらない」「逆に不安をあおる」などの課題もあり、あらためて情報提供の難しさが浮き彫りになった。

 関東・東北水害の際、埼玉県内では6市町に避難勧告が出され、県東部はさいたま、吉川、八潮市の一部で発令された。越谷市は避難勧告を発令せず、防災無線も放送しなかったが、市内を流れる中川や元荒川、綾瀬川などが氾濫危険水位に達したため、避難所を開設、一部の世帯には戸別に避難準備の声掛けが行われた。

 防災無線を流さなかった理由について、市は職員が何度も川に出向いて堤防が決壊することはないと判断したことや、深夜の放送で逆に不安をあおることを挙げる。

 過去には防災無線の放送で市に「うるさい」「子どもが起きた」といった苦情もあり、放送しても大雨で正確な情報が伝わらないことも懸念され、市はメールの配信サービスに登録した市民に避難所の開設や東武線せんげん台駅の冠水状況などを送信。避難勧告と判断した場合は防災無線や広報車などを使って情報を伝える予定だった。

 ただ、市内のり災証明受け付け件数は17日現在で床上浸水241件、床下浸水102件、車など6件に上った。市民からは「なぜ防災無線を放送しなかったのか」という声も上がった。

■問い合わせが殺到

 吉川市は10日午前1時ごろと5時ごろ、市内を流れる中川が氾濫危険水位に達し、中川の周辺地区に限り避難準備情報や避難勧告を防災無線で流した。ところが放送直後から、放送地域の周辺に住む市民から「何の放送なのか」「聞こえなかった」という問い合わせが殺到。一時、電話が鳴り止まない状況になった。

 同日中に避難勧告解除と、避難所閉鎖が防災無線で市内全域に伝えられたが、市民からは「全域に放送してくれればよかった」「ちゅうちょなく放送してくれて高く評価している」などと賛否が分かれた。

■登録しなくても

 一部地域で避難勧告を発した八潮市は「防災無線では放送内容が長く、正確に伝わらない」と、対象地域を指定し、登録しなくても情報が受け取れる携帯電話の緊急速報メールを活用した。

 対象地域の町会長や自治会長にはあらかじめ、電話で緊急速報メールを配信することを伝え、防災無線は避難勧告解除の際の使用にとどめた。市民からは「防災無線を流してほしかった」という声もあった一方で「メールを配信してくれてよかった」という市民もいた。

 自治体ごとに異なった災害対応に、各市の担当者は「情報伝達手段は多様化しているが、それぞれに課題がある」「最終的には災害対策本部長である市長がどう放送するか判断している。どのように情報提供するのかは非常に難しい」と非常時の判断と周知方法の困難を打ち明けた。

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