2015年7月28日(火)

ピーちゃんは命の先生 川口の中学生、母校の小学校でニワトリ飼育

永堀さんとピーちゃん=川口市立芝富士小学校の鳥小屋

 少年は小学校4年の春、ペットショップでヒヨコを買った。「ピーちゃん」と名付けたヒヨコはどんどん大きくなり、約3カ月後には、少年が通っていた小学校の鳥小屋に引っ越した。

 3年と4カ月の間、ずっと面倒を見てきた少年はこの春から中学生になった。今も母校の鳥小屋に通い、ピーちゃんの世話を続けている。

 小さな命を思うとき、岩手県でいじめを苦に自殺したとみられる中学生2年の男子生徒にも心を寄せる。「優しい言葉を掛けていたら救えた」と。

 少年は、川口市立芝西中学校1年の永堀海瑠(かい)君。

 同市立芝富士小学校4年だった2012年3月、市内のペットショップで買ったピーちゃんは、あっという間に大きくなった。ただ部屋の畳の上にふんをするのが悩みの種。困った彼は小学校の鳥小屋に目を留めた。校庭の片隅にあった鳥小屋は長く使われないままになっていた。

 その年の6月のこと。「昼休みに永堀君が突然『相談したいことがある』と校長室にやって来たんです」と大沢正則校長(59)は振り返る。

■約束

 「うちのニワトリを校庭の鳥小屋に入れてほしい」と海瑠君は切り出した。大沢校長が「あなたがこの先、責任を持って面倒を見ると約束できますか」と尋ねると「はい、できます」ときっぱり。

 「では考えてみましょう」と大沢校長は言ったが、腹は決まっていた。放課後、男性校務員と2人で鳥小屋を掃除した。1週間後、大沢校長が「許可」を伝えると、海瑠君は途端に笑顔になった。

 海瑠君は毎朝、早めに登校して鳥小屋を掃除した。ピーちゃんは小屋の前に生えた雑草やバッタを食べた。大雪の時は雪を食べた。時々、自宅に里帰りする。胸に抱えて自転車で走る間、ピーちゃんは腕の中でじっとしている。

 夏は「暑かったかい?」、冬は「寒かったかい?」と声を掛ける。「おいで」と言うと近寄ってくる。「じっと僕の目を見て、首をかしげる。言葉が通じているんです」

■命を守る

 「ピーちゃんは、僕が毎日来ているから寂しくないと思う」と話す海瑠君。小さな命を守っているという気持ちがあるせいだろうか、岩手県矢巾町で中学2年の男子生徒が列車に飛び込んで自殺したニュースは無関心でいられない。男子生徒はいじめに遭っていることを担任の教師などに訴えていたという。

 海瑠君はこう話す。「自殺した彼が出していたSOSを先生たちが無視したようになってしまったことをニュースで知った。僕がピーちゃんにしているように、先生たちが優しい言葉を彼に掛けていたら、彼を救えたと思う」

 海瑠君の将来の夢は「動物の命を守る仕事」だ。

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