2015年6月27日(土)

63年の歴史に幕 浦和区の老舗カメラ店「北星堂」、30日に閉店

父親から受け継いだ店を閉める社長の北村武夫さん(右)と妻の佳子さん=24日、さいたま市浦和区高砂の北星堂

 さいたま市浦和区の県庁通りにある老舗カメラ店「北星堂」が、30日の営業を最後に63年の歴史に幕を下ろす。プロから愛好家、一般の客まで、幅広い層に頼られる存在だった。時代はフィルムからデジタルカメラへ、さらにはスマートフォンでも高画質の撮影ができる世に様変わり。市内には大型量販店も次々と誕生し、個人店への逆風はますます強まっている。店舗の賃貸契約が更新を迎えるのを機に、社長の北村武夫さん(69)は廃業を決断した。

新聞記者集った草創期

 創業は1952年。北村さんの父直四郎さんが、写真の現像などを行う店として、借家暮らしをしていた現在の場所で開いた。屋号の「北星堂」は、父の姓「北村」と母みよさんの旧姓「星野」から命名。「子どものころは、新聞記者が現像やプリントを頼みに来ていた。よくわが家に上がり込んで、酒を飲んでいましたよ」と懐かしむ。

 男ばかりの3兄弟は少年時代から、店の仕事を手伝ったという。次男の北村さんが家業に本腰を入れだしたのは、20歳の時。三男で店長の秀夫さん(67)も、24歳で店に就職した。2人は「将来は店をやるんだと、自然に思っていた」と口をそろえる。

デジタル化にもめげず

 79年に直四郎さんが64歳で亡くなると、北村さんが社長に就任。カメラ器材だけではなく、電気製品や音響、映像機器の販売も扱うようになって業績を伸ばした。最盛期はバブル経済のピークだった90年代初頭。現在の倍ほどの売り上げがあったという。

 だが、やがてバブルは崩壊。2000年ごろになると、カメラはフィルムからデジタルに瞬く間に転換していった。フィルムや印画紙が売れなくなり、現像の発注も激減。メーカーの販路も変わった。それでも、デジタルカメラの販売に力を注ぎ、専用プリンターを導入するなどして、荒波を乗り越えていく。

盗難被害とレッズ優勝

 最も悔しかったのは、まだ木造の旧店舗だった17年ほど前、閉店後の夜間に盗難被害に遭い、商品や売上金など一切合財を失ったこと。北村さんは「朝出勤してみたら裏口の錠が壊されていて、みんな持って行かれていた。3千万円相当以上の被害があったかな」と苦笑いする。

 喜びも味わった。浦和レッズがJリーグ1部で初めてリーグ戦ステージ優勝した2004年、そしてリーグ戦を年間で初制覇した06年には、店の前がパレードの順路になった。「市民として立ち会えて良かったですね」。店内にある当時の写真を眺め、北村さんは目を細めた。

餞別受け「商売冥利」

 現在、5人で営業しているが、北村さんと妻佳子さん(66)、秀夫さんは引退予定で、社員2人は新しい就職先を探すことになる。経理担当の佳子さんは「肩の荷が下ります」と表情が緩む。秀夫さんは「全てを任せてくれていたお客さんには申し訳ない」と心残りがあるようだ。

 食事に招かれたり、餞別(せんべつ)をもらったりと、常連客に惜しまれているという。「私たちこそ感謝しなければいけないのに、商売冥利(みょうり)に尽きます」と北村さん。30日午後8時、店の明かりが一つ、浦和から消える。

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