2015年5月26日(火)

陸上男子・藤光謙司(市浦和高出)、充実一途 近づく理想形

抜群の安定感で日本男子短距離界を支える藤光謙司=16日、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場

 2日にバハマで開催された陸上の世界リレー選手権400メートルリレーで銅メダルを獲得し、来年のリオ五輪の出場権を獲得した日本男子(大瀬戸、藤光、桐生、谷口)。その2走を務め、随一の安定感を誇るのが市浦和高出の藤光謙司(ゼンリン)だ。

 今季は300メートルで自身の持っていた日本記録およびアジア最高記録を塗り替えると、200メートルでも5年ぶりの自己新。さらに100メートルでも自己記録を更新した。リオの前にまずは今夏の世界選手権。個人種目でも出場を狙う、円熟味を増した29歳から目が離せない。

 世界リレーで米国、ジャマイカに次ぎ3位に食い込んだ日本。7番手通過した予選の38秒73から決勝では38秒20までタイムを縮めた。主力メンバーを欠き、苦戦が予想された中でも攻めのバトンパスがさく裂し、自分たちも目を丸くするほどの好成績。選手たちは喜びに沸いた。

 ただ藤光は手応えを語った一方で、世界トップレベルとの絶対的な差を冷静に分析する。

 「バトンがうまくいってあれ(3位)。個々の走力では、アメリカやジャマイカと比べて、話にならないと実感してしまった。世界陸上では他の国も上げてくる。スプリント能力を磨き直さないと戦えない。結果が良かったからこそ、あらためて身が引き締まる思い」。快挙と同時に芽生えたのは、強い危機感とさらなる向上心だ。

 その気持ちも重なってか、藤光はレースで常に高いパフォーマンスを披露している。

 バハマから帰国後、10日のセイコーゴールデングランプリ川崎200メートルで自己記録を5年ぶりに塗り替える20秒33で優勝。16日の東日本実業団選手権100メートルでは予選で10秒27と自己ベストを更新した。

 100メートルの優勝後にはレース続きであまり練習を積めていない現状を、「ガス欠気味で筋力は落ち、貯金を切り崩して走っている感じ。もう一度貯蓄しないと」と独特の言葉で表現。

 つまり、照準を合わせる6月末の日本選手権へ「狙っていく試合に備えられれば、もう一段階上の記録を狙える流れはできている」。

 市浦和高、日大時代も実績を残してはいたが、けがと隣り合わせの競技人生だった。社会人になって故障も減り、さらにここ2、3年の充実度は目を見張るほど。経験の積み重ねが技術の向上、安定につながり、理想の走りを描く頭に、ようやく肉体が追い付いてきたと自負している。

 日本男子短距離界は、桐生(東洋大)が100メートルで、9秒台をいつ出すかに最大の注目が集まっている。そんな中、"安定感"という要素で、藤光の右に出る者はいない。29歳という年齢はスプリンターとしてはベテランと呼ばれる域。それでも自信を持って言い切る。

 「これまでも限界は感じていなかった。こうやって記録がついてきて、やるべきことは間違ってなかった。自分に対して楽しみが増えた」。俳優・速水もこみち似の端正なマスクを緩めた。

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