2015年4月17日(金)

運転手が出産の応急処置 浦和区・つばめタクシーで赤ちゃんと再会

産まれた咲花ちゃんの顔を見せる熊谷麻奈未さん(右)とタクシー運転手の小久保一夫さん=15日、さいたま市浦和区本太

 陣痛に襲われた女性を病院に送ろうとタクシー運転手が駆け付けると、すでに赤ちゃんは産まれていた―。

 さいたま市浦和区のタクシー会社が行っているサービス「陣痛タクシー」で、想定外の事態が起きた。びっくりしたものの、男性運転手は応急処置を手伝い、病院に無事送り届けた。元気に退院した母娘は15日、運転手と再会、新たな命が誕生した喜びを分かち合った。

 陣痛タクシーは浦和区の「つばめタクシー」が行っており、利用者は事前に自宅の住所や出産予定の病院、予定日などの情報を登録。陣痛が始まり、他の交通手段がない場合に、情報を基にいち早くタクシーが駆け付ける。

 さいたま市内に住む熊谷麻奈未さん(25)は、今月1日昼前、陣痛に襲われた。初めての出産で、予定日より5日早い。夫も仕事に出掛けていた。上尾に住む母親に連絡を入れたが、産まれるのが分かり、陣痛タクシーに連絡を入れた。

 配車を受けた運転手は、待機所にいた小久保一夫さん(63)。

 運転手歴30年のベテランは熊谷さん方に急行、呼び鈴を鳴らしたが、様子がおかしい。「返事がないのに、インターホン越しに赤ちゃんの泣き声が聞こえた。おかしいなと思った」。室内に入ると仰天。赤ちゃんはすでに産まれていた。

 小久保さんが驚く一方で、熊谷さんは落ち着きを取り戻した。「あの時は必死でよく覚えていないけれど、運転手さんが来て、1人じゃないと安心できた」。病院に電話して応急処置を聞き、赤ちゃんの体をタオルで拭いて、体温が下がらないよう新しいタオルでくるんだ。

 小久保さんもタオルを取りに行ったり、言われるがままに部屋の中を動き回った。「救急車を呼ぼう」と提案したが、病院からそのまま送って来るように指示を受け、熊谷さんと赤ちゃんを乗せて病院に向かった。

 自宅から病院までは約3キロ、約10分の道のり。「あんなに10分を長く感じたことはなかった。30秒の信号がとても長く感じた」と小久保さん。無事に送り届けると急に足が震えて、一気に疲れが出た。

 退院した熊谷さんと赤ちゃんは、15日につばめタクシーを訪れ、小久保さんにお礼を述べ、咲花(はな)ちゃんと名付けられた女の子の顔を見せた。「本当に感謝しています。もし来てくれなかったら、こんなに元気な赤ちゃんは産まれなかったかもしれない」と熊谷さんはほほ笑んだ。

 同社によると、「陣痛タクシー」はサービスを開始した2年前の秋から登録者数が増加。約1割が実際に陣痛でタクシーを利用したという。

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