県部門

中村 嘉之

豚の繁殖技術を開発

中村 嘉之(なかむら・よしゆき)氏(57)

県農業技術研究センター室長

 豚の繁殖技術開発を中心とした研究に約四半世紀関わり、県内外の畜産業振興に貢献した。「研究は終わりがない仕事だが、自分に向いていると思う。今の私があるのは、たくさんの方々に支えられたおかげ」と感謝する。

 川越市出身。幼い頃から動物好きで、獣医になろうと日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)へ進んだ。1993年、県庁に入庁。2001年から県畜産センター(現県農業技術研究センター)に異動し、当時あまり研究されていなかった豚の繁殖技術に取り組むことになった。

 豚の人工授精には大量の精液が必要だったが、子宮深部に直接届ける手法を考え、ごく少量でも受胎させる技術を確立。体外受精卵を作り子豚を産ませることにも、世界で5例目の成功を収めた。また、受精卵を急速凍結させるガラス化保存方法で生存率が向上。このグループ研究は07年に知事表彰、08年の畜産技術協会賞を受けている。

豚はひとたび豚熱(CSF)に感染すると、大量の殺処分が避けられない。「彩の国黒豚」などブランド豚の血統を守るには、確かな繁殖技術が不可欠だ。「県内の畜産農家が安定的に生産できることで、食を通じた県民の健康に役立てる」と強調した。

市部門

金井塚 真嗣

笑顔で調理一筋37年

金井塚 真嗣(かないづか・しんじ)氏(59)

大袋保育所給食調理員

 越谷市立大袋保育所の調理員。これまで衛生管理が厳しい市立病院、保育所で調理一筋37年、病院食や保育所給食を作り続けてきた。受賞について「まさか自分が選ばれるとは。一生懸命やってきたことが評価されたのかな」と照れくさそうに目を細めた。

 栄養士が作成した献立に忠実に、安心安全な大人数の食事、給食を時間通りに調理。並行して離乳食、アレルギー食、宗教食など個別異なる注文に対応する。

 1988年、越谷市役所に入庁。市立病院診療部栄養科に配属され、22年間、病院食を調理した。給食調理を経験したいと保育施設課に。3カ所目となる現在の保育所では、短時間で子どもと職員合わせて毎日160食を調理する。

 給食の後は、季節の食材を用いたおやつも調理。チームで協力しコミュニケーションをとりながら計画通りに調理を進める。冗談を交えながらチームをまとめ、後輩の指導にも尽力。「ここまで続けて来られたのは支えてくれた上司や同僚のおかげ」

 保育所では子どもの感謝の言葉に励まされているという。「おいしかった、ありがとうと言われ、子どもたちが喜ぶ姿を見ると、モチベーションが上がります」と屈託のない笑顔を見せた。

町村部門

内山 泰彦

人生経験基に親身に

内山 泰彦(うちやま・やすひこ)氏(84)

滑川町困りごと相談員

 町民の生活上のあらゆる悩みや課題について向き合う「困りごと相談員」。2004年に63歳でこの職に就き、22年目となる。

 前職は警察官。53歳まで35年間、警視庁で暴力団担当を中心に刑事畑を歩いた。さまざまな捜査を通じて、犯罪に関わる人間の心の弱さなどを見つめてきた。

 相談員に就いた頃、産業廃棄物の投棄を巡って業者が町役場に押しかけ、職員が心身ともに疲弊することがあった。刑事時代に暴力団担当だった経験を生かし、関係者の事務所にも出向いて対応し、解決に導いたという。

 ごみ置き場のトラブルで、担当課にごみ分別の看板を出してもらうなど、関係機関と連携して暮らしやすい生活の維持にも貢献している。

 今回の受賞決定の連絡を受け、「最初は何のことか分からなかった」と驚く。これまでの活動が評価されたことに「名誉なこと」と喜んだ。

警察部門

菅野 智章

自分の経験 若い人に

菅野 智章(かんの・ともあき)氏(55)

西入間署刑事課鑑識係長

 警察官として36年余りのキャリアを積んできた。受賞に接し「ただ、びっくりした」と笑顔を見せる。

 北海道出身。刑事ドラマなどを見て警察官に憧れを抱いた。1989年に県警へ入り、浦和署に配属。捜査1課や機動捜査隊、所沢署など主に刑事畑を歩んできた。「事件を捜査し、被害に遭われた人から感謝を伝えられると、じんとくる」という。

 東入間署刑事課のころ、男女トラブルの仲裁に駆け付けた交番勤務の警察官が、男に刃物で刺され死亡する事件があった。被害者は、数日前に交番に立ち寄った際「お茶を飲んでいきなよ」と声をかけてきた警察官だった。「来年には退職だから」。そんな会話もした。「家族のためにも、殉職者を出しては絶対に駄目だと思った」と語る。

 鑑識捜査に取り組むのは、2021年から務める西入間署が初めてだ。「被疑者につながる指紋や足跡などの証拠を採取しなければならない。初動捜査の要だ」と強調する。

若手の警察官が増え、捜査もデジタル化が進む。「現代の手法を勉強しなければならない」と明かす一方で、「自分の経験が若い人の役に立つことで、捜査能力が向上していくといい」。力強くそう話した。

消防部門

牧 国夫

原動力は地元のため

牧 国夫(まき・くにお)氏(68)

熊谷市消防団長

 「地元のために一生懸命やる」が活動の原動力。「当たり前のことをやっているだけなのに、ありがたいです」と受賞の感想を語る。

 旧大里村(現熊谷市)で生まれ育った。40年以上前、当たり前のように、水害を予防する水防団員になった。1993年に消防団員を拝命し、郷土の防災に貢献してきた。2019年に団長に就任し、34分団、団員473人(10月1日現在)のトップを務める。

 13年に熊谷市内で竜巻が発生。副団長だった当時、朝一番で巡視に行くと、車や物置、排水溝のふたなどが吹き飛び、辺りに散乱。がれきなどの撤去を行い、この時の活動が防災功労者内閣総理大臣表彰になった。また、団長になった年には台風19号の影響で利根川の支流が越水、火災も発生した。安全面を確認後、水防に当たっていた団員を火災現場に行かせると、「団員がいなくなった」と住民からおしかりを受けたこともあった。

 07年に旧江南町が熊谷市に編入合併したのを機に、熊谷市の職員に。その前は一部事務組合の職員で、地元で公務員としてのキャリアも積んできた。

 「団員一人一人が一生懸命やっている。各団員の心構えをいかに高めていくかが重要になる」と話す。