埼玉新聞

 

【悠木碧インタビュー】神話のその先を紡ぐ 「普通の女の子」が一番難しい 劇場版新作『魔法少女まどか☆マギカ』

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  悠木碧

     悠木碧

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

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     『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

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  •  『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』より(c)Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project

 「この神話に主人公として参加させてもらえているのは、とんでもないことだと思います」。声優の悠木碧はそう語る。少女たちの祈りと痛みを描き、2011年のテレビアニメ放送以来、多くのファンを魅了し続ける『魔法少女まどか☆マギカ』。願いと引き替えに戦う“魔法少女”たちの過酷な運命を描く物語で、主人公の鹿目まどかの声を演じてきた。2013年の「[新編]叛逆の物語」の正統な続編に当たる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が8月28日、全国公開される。まどかと長く共に歩んできた悠木に、神話の続きを紡ぐ覚悟を聞いた。(共同通信=高坂真喜子)

(1)「君の物語は君のためにある」

▼記者 新作が作られると聞いた時、どのように感じましたか。

●悠木 『魔法少女まどか☆マギカ』は、テレビシリーズを収録していた当時からは想像できないくらい、多くの方に楽しんでいただけるようになりました。いつの間にか私の手を離れて、なんだか“伝説”のようになってしまった、と遠くから見ている気持ちでした。まどかとして、その先を一緒に紡がねばならないと言われ、重責を感じました。どんどん大きくなってしまったコンテンツのさらに先を描くということは、その期待に応えるということでもあり、気を引き締めて取りかからないといけない。

 ただ純粋に、まどかとほむらのその先のお話を見てみたいとも思いました。

▼記者 2013年の「叛逆の物語」の後も、まどかをたびたび演じてきました。

●悠木 アプリなど本軸から派生した展開がいろいろとありました。本軸がいかに濃かったかということだと思います。ずっといろんなところで愛してもらって、まどかと顔を合わせる機会も多くて、良き友人のように過ごしてきました。

▼記者 新作の台本を読んだ感想は。

●悠木 テレビシリーズの時はうまく言葉にできなかったことが、自分も大人になって言葉にできるようになりました。この作品は、まどかがタイトルに入っていますが、話者はほむらちゃんであり、彼女は自分を主人公にすることができなかった少女だと思っています。自分の人生の主人公をまどかにしちゃったから、こんなことになっている。主導権を他人のために使ってしまったほむらちゃんに、まどかは「君の物語は君のためにあるんだよ」と、ほむらちゃんに人生の主導権を返したい、ということをずーっとやっています。

 実はまどかは自分の物語の主導権を徹底して自分で握り続けているから、彼女もまた主人公であり、まどかが思っていることは絶対に譲らないという芯もきちんと見えました。「叛逆の物語」までのまどかは悲劇のヒロインに見えていたかもしれませんが、決してそれだけではない、というのがしっかり描かれているので、そういう意味では彼女に秘められた、悪魔すら魅了する神聖性が詰まったお話になっていると思います。だからこそ普通の少女として演じようと考えました。

 その少女感が多分、ほむらを惑わせる、ほむらの弱みになるということなんだな、残酷だな、と思って台本を読みました。そのまどかの優しさが、今回は別の角度からも描かれるので、どういうものなのかをより具体的に理解してもらえるのではないかと。優しさは分かりにくいけど、すごく残酷かもしれない、ということが詰まっている脚本でした。

(2)心の痛みがこの作品の良さ

▼記者 新キャラも出てきます。

●悠木 新キャラもすごく「まどか☆マギカ」らしい暴走をしてくれます。「そうそう、この心の痛みがこの作品の良さであり、つらさだったよな」と。「ここで新キャラ? どうするの」と思うかもしれないですが、なぜここに来て出てきたのかがはっきりしているキャラクターなので、必要なピースだと分かっていただけるんじゃないかと思います。

▼記者 改めて演じて、この作品の変わらない魅力をどこに感じますか。

●悠木 空間の描写がファンタジックで、どこでもない世界を描いている印象を受けます。例えば学校のシーンも、絶対あり得ないような空間になっていて、街も「そんなところはないよな」という夢の中みたいな作りになっています。ただ、人間の心理描写はめちゃくちゃ共感できるところしかない。空間の描写がファンタジックだからこそ、「もし私がここにいたら」と想像しやすくなっているところが魅力だと思っています。アニメだと思って見ていたら、自分の現実のメンタルが引きずられていくのが私の好きな部分です。そして圧倒的なビジュアル。もはや平面ではなく、空間アートのようになっている。アニメの新しい形をまた一つ生み出した作品ですよね。

▼記者 アフレコは他のキャストさんと一緒に?

●悠木 全員でとはいきませんが、ほぼ一緒に収録できました。まどかは優しい子なので、基本的に誰かの投げかけに打ち返すキャラクター。だから彼女を彼女だけで作るのはすごく難しい。周りにいつものみんながいてくれることで、私も当時のまどかに戻しやすかったです。みんなで作ってきたんだなと、すごくうれしかったです。

(3)普通の女の子を演じるのが一番難しい

▼記者 今回演じる上で意識したことは。

●悠木 まどか自身は変わることはないです。なぜなら、今回の物語の舞台自体が、ほむらちゃんが変わってほしくないと思っている世界だから。まどかをあのままでいさせるために、ほむらちゃんが頑張っています。でも、まどかは優しいので、新しい出会いがあると、その子に合わせてどうしても少しずつ進化してしまう。その不安定さがあります。

 成長しきる前のまどかの不安定さは、以前は自分にもありましたが、大人になった自分は、意識的にその不安定さを出さないといけない。そこは以前との大きな違いですね。まどかと20歳くらい差があるので、不安もありましたが、だからこそ見えてくるまどかのうぶでかわいらしい部分を、なるべく色を付けすぎずに表現するのが大事だと思って挑戦しました。

▼記者 テレビシリーズの頃は等身大に近かったんですね。

●悠木 まどかと同じように悩み、苦しみ、近いからこそ彼女の決断できないタイミングとか優しすぎるところに、いら立ちまで感じていました。あれから私もずいぶん大人になって、でもまどかはそのままでいて、子どもにどれだけの正義を求めてるんだと考え直しました。

 当時はとにかく言われるまま、トライアンドエラーで、NGが出たらOKが出るまでとにかく投げ続けるんだというスポ根精神でやっていました。今回はそれを再現しないといけない。当時だからこそできた部分もあるなと思いつつ、プロだからどこまで再現できるかは自分の腕にかかってるぞ、という気持ちもありました。

▼記者 当時に戻すのは大変なことですね。

●悠木 あと、普通の女の子を演じるのが一番難しいです。周りのキャラクターたちがいるから普通が出るじゃないですか。まどかを単品でまどかとして仕上げるのは相当難しいぞと思いつつ、それがまどかの良さなんですよね。今の方が当時よりまどかのこと、めっちゃ好きです。すごい良い子だし、幸せになってほしい。ほむらちゃん側の気持ちにちょっとなり始めています。

 クセの強いキャラクターは、スイッチを入れれば「パン」となれるけど、まどかみたいなニュートラルなキャラクターは、ずーっとつまみを調整しながら芝居をしなきゃいけないから、めちゃくちゃ難しい。見ているお客さんたちも、私の色を意識しちゃうと思うので、それをいかに忘れてもらって、まどかとして感じてもらうかを考えていました。でもまどかは、ニュートラルゆえに、いつの間にか世界中にいるような、間口の広いキャラクターでもあります。

 とにかく、理想のまどかをめがけて一生懸命楽しく練習しました。

(4)大人の私に刺さる言葉

▼記者 アフレコで印象に残ったことはありますか。

●悠木 本編中のどこか、皆さん探していただきたいですが、まどかのセリフを1カ所録り直している部分があります。なぜかというと、セリフが変わったからです。このセリフは、アフレコ前からもしかしたら違うかも、という話が出ていたらしいです。私自身も実は、どういう意味でこれを言っているのかな?とニュアンスを受け取りかねていた部分でした。

 その後、全部組み上がって、楽曲ができて、細部までこだわって、それぞれのキャラクターたちのピースを一つずつ丁寧にはめていって、という中で、新しいセリフができました。すごく大事なセリフになったので、丁寧に取り組みました。その変更には主題歌の影響があったそうで、音楽の梶浦由記さんたちもまどかのことを考えてくれていることを感じて、すごくうれしかったですね。

▼記者 特に印象に残ったキャラクターはいますか。

●悠木 個人的には、なぎさの活躍がびっくりしたかも。なぎさ大活躍なんですよ。彼女は魔女になった経験もありながら、魔法少女としての姿もある、どっちにも合わせられる、実は最強のメンタルの持ち主であることが今回判明しました。なぎさに突きつけられた言葉が、大人の私に一番刺さりました。そういう意味では、まどかとほむら以外のキャラクターたちの深掘りもすごくされています。ビジュアルががっつり変わったことで印象的だったさやかちゃんの活躍も見ていただけると、すごくかっこいいなと思ってもらえると思います。

▼記者 ほむら役の斎藤千和さんにはどう感じていますか。

●悠木 千和さん自身は、どちらかというと「人生って楽しく生きるべきじゃない?」というタイプの方なので、私は彼女の哲学にいろんな元気をもらっていたし、仕事との向き合い方、力の抜き方もいっぱい教えてもらってきました。ほむらちゃんの愛情とは違う愛情で、多分私のことを育ててくださっていたと思います。逆にほむらちゃんとまどかとして接する時は、実は主導権があるのはまどかなんです。だって、ほむらちゃんの方がまどかのこと好きだから。たぶんほむらちゃんを演じている時の千和さんは、「どんな球でもいいよ」と待っていてくれます。

 2人のシーンを演じている時、まどかのためにこれだけ頑張ってくれるほむらちゃんを見ると、まどかにもこの頑張りが届いていてほしいなぁとは思いましたね。

(5)人生が一変した

▼記者 『魔法少女まどか☆マギカ』に出演したことは、悠木さんにどんな影響を与えましたか。

●悠木 出ていなかったら、私の名前を知らない人がもっとたくさんいたと思います。当時、まだ名前も知れ渡っていなかった時に起用をしてくださった人たち、世の中に出していいようにたたき込んでくださったみなさんたちがいて、本当にありがたかった。

 厳しく言う人たちは誰もいなくて、でもちゃんと期待はしてくださっているのが分かって、それにとにかく応えたかった。初めて大人に期待をしてもらったみたいな、そういうのはすごくうれしかったし怖かったけど、でもそこに応えて、夢を見て頑張る姿を見せることが、私に与えられた使命だったと思います。この神話に主人公として参加させてもらえているのは、改めてとんでもないことだと感じています。人生が一変しました。

 自分の世界がどんどん広がり、今は、世界中の人に知ってもらえています。先日、別の作品で海外のイベントに参加した際に「まどか」って呼んでいただいて、コスプレしている人もいっぱいいて。世界中にまだまだいっぱいファンがいることが分かり、すごくうれしくなりました。

▼記者 悠木さんはこの先、この作品をどんなふうに演じていきたいですか。

●悠木 どの時代の人が見ても、きっと心に残る作品になっていると思います。これまでの劇場版を「ワルプルギスの廻天」の収録前に見返したら、決して古くない。未来の人が見ても、残っていく作品だと思いました。

 この先、私はまどかたちと違っておばあちゃんになっていきますが、まどかを新たに演じる人ができて、譲れるぐらいまで、長く愛される作品になったらいいですね。

【ゆうき・あおい】

千葉県出身。出演作は他に『薬屋のひとりごと』の猫猫役など。

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