埼玉新聞

 

【連載】さいたま市の英語教育 竹居教育長に聞く 「世界とつながる姿勢、多様な人々と信頼関係を築くためのコミュニケーション力を」

  • 竹居秀子氏

    「(在住外国人が増え)英会話を立ち上げる時に想像していたグローバル化社会が現実になり、やってきたことは間違っていなかったと確信している」と語る竹居秀子教育長

  • 竹居秀子氏

 英会話からグローバル・スタディ(GS)へと受け継がれてきた、さいたま市の英語教育。小学校での英語教育を提案し、指導主事としてカリキュラムの作成に携わった同市の竹居秀子教育長に、これまでの20年と今後の展望を聞いた。

―小学校英語の必要性を感じていた

 私自身、小学生から英語を習い、毎年参加していたキャンプでさまざまな国や地域の人と出会う面白さを感じました。英語教員になった後も国際理解への思いは絶えず頭の中にあり、当時の教育長に「小学校英語をやりたい」と直談判しました。その後、企画書を作成し、最終的に許可をもらいました。

―英会話カリキュラム作成を振り返って

 (ワーキンググループ事務局長だった)利根川(恵子)先生と2人で、英語に力を入れている自治体を見に行きました。そこでは中学校の教科書を小学校に配って授業をしていたり、発音中心の授業だったり。でも、私たちは人間関係や論理的思考をしっかりと築いていく英語教育をしたかった。その時からこれまで、その方針はぶれていません。目指したのは、「文法の間違いなく、発音良く」ということではなく、対話やコミュニケーションを図りながら人や世界とつながるプログラム。さまざまな学校規模の先生に集まってもらい、ブラッシュアップしながらカリキュラム開発を進めました。

―大変だったことは

 生みの苦しみです。当時の英語は先生が一方的に教えて「Repeat after me」という教育でしたが、それは違うと思っていました。言葉が追い付かない場合は表情やジェスチャー、絵に頼ってもいいから、できるだけペアワークなどで実際に関わらせたかった。「Why」や「Because」を小学校から入れようとしたら、多くの先生方は「中学生でやるものだ」と大反対。それでも「Becauseの後は日本語でもいい」ということで入れました。邪道だと言われたこともありましたが、信念を持って進めました。持続するために大事なのは、しっかりした教育理念、事業の目的、一貫性。その設計思想があったからこそ、薄皮のように積み重なって発展し、今につながっています。

―英語教育実施状況調査で中学3年生の英語力が7回連続で全国1位になった

 子どもたちの努力がまず一番。そして、独自の英語教育を信じてついてきてくれた先生方に感謝しています。地域の皆さんの「頑張れ」という後押しも大きかった。一体となって進められたことが結果に結び付いたと感じています。

―GSを学んだ子どもたちに期待すること

 「Think Globally,Act Locally」という言葉があります。日本で暮らしていたとしても、多様な文化を理解・尊重し、地域社会に貢献できる。そういう子もグローバル人材です。世界とつながる姿勢、多様な人々と信頼関係を築くためのコミュニケーション力を身に付けてほしいと願っています。

―AIの発展が目覚ましい近年。求められる英語力は

 AIは言葉の翻訳や求めている表現の提案、文法の間違いを訂正してくれたりと英語学習を支える強いパートナーであることは間違いありません。一方で相手の表情や反応、伝えたいことに思いを巡らし、ふさわしい言葉を選びながら対話を重ね信頼関係を築いていくことは、感性や想像力のある人間だからこそできること。AIが発達すればするほど、人間らしい血の通った英語力、豊かなコミュニケーション力が必要になってくると思います。

―今後のGSについて

 言語は時代とともに変わります。守りに入るのではなく、積み重ねてきた教育理念を土台に一歩先を見据えた新たな段階へ進むことが重要です。課題だと感じているのは、9割の子どもたちが英検3級相当の能力を持つ一方、1割の子はそこまでたどり着いていないこと。シンプルに計算すると中学3年生で約千人になります。その子たちが英検3級相当でなくてもいいから、外国人に会った時に道案内できる、笑顔で伝えようとするように育てていきたいです。

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