まさか…高校生になっても舞台に 秩父夜祭に登場「津谷木子ども歌舞伎」、メンバーが不足 進む少子化、小学生役者の新規加入が年々厳しく 今は地区外でも参加を呼びかける状況 「昔は役を取り合うほど」
秩父夜祭大祭の3日、秩父市中町の旧ベスト電器前で屋台芝居が行われ、小鹿野町の津谷木歌舞伎が、中町屋台の豪華な張り出し舞台で2演目を披露した。最初に登場したのは、「津谷木子ども歌舞伎」の役者9人。メンバー不足のため、今回は地元高校生や中学生も「子ども役者」の一員として演じ切った。町内の少子化が進み、津谷木地区の小学生役者の新規加入は年々厳しい状況が続いている。「子どものみでの出演は今後も限られてしまうので、後悔のない芝居をしたい」と、子ども役者たちは熱い思いを胸に舞台に立った。
屋台芝居は秩父夜祭で屋台を曳(ひ)き回す宮地、本町、中町、上町の4町会が毎年交代で実施している。1893(明治26)年からの特別な縁で、津谷木歌舞伎は、中町が当番町を務める年に限り、屋台芝居に登場する。コロナ禍の行事縮小の影響で、中町屋台が街中に設置されたのは6年ぶりとなった。
津谷木子ども歌舞伎による屋台芝居は長年続き、前回の2019年時は、小学3~6年生の役者7人が舞台に立った。7人はこの6年間で、中学、高校に上がり、新規の小学生役者が入らないまま、今年の中町の当番を迎えた。
師匠の小沢幸男さん(68)は「昔は役を取り合うほど子ども役者が充実していたが、今では小学校に頼んで、地区外にかかわらず参加を呼びかけている状況」と少し寂しげに語る。現在の津谷木地区住民は40軒に満たない。地元の伝統を絶やすまいと、親子、きょうだい、親族らが一丸となって継承している。
この日の子ども歌舞伎の演目「寿曽我対面工藤館之場」で曽我五郎時致を演じた高校3年の日野原大麒さん(18)は、中町屋台に立つのは3度目。前回19年の舞台では主役を見事に演じ切った。当時は小学6年生。「まさか高校生になっても夜祭の舞台に立てるとは思ってもみなかった」
日野原さんは、津谷木歌舞伎の役者でもある父和彦さん(51)に誘われ、3歳のころに歌舞伎を始めた。地元の木魂(きむすび)神社例大祭や、郷土芸能祭などの舞台で出演を重ね、気が付けば歌舞伎のとりこに。もっと役者道を追求したいという思いもあるが、今後の進学や就職を考えると、「高校生で一区切り」と意思を固めていた。
「これが最後の舞台になるので、今までの集大成をぶつける」と意気込み、この日も好演が光った日野原さん。舞台後、「存分にやり切った。小沢師匠をはじめ、支えてくれた地域の方々に感謝し、息を合わせて一つの事をやり遂げる大切さを次のステージに生かしたい」と爽やかに語った。
舞台中央で初々しい演技を披露していたのは、中学1年の柴崎陽大さん(13)、小学5年のもも花さん(11)、小学3年の敬大さん(8)の3きょうだい。今舞台では、小学生の出演は見込めないと思われていたが、3人が10月に出演を希望し、津谷木地区に活気を与えた。
3人とも役者未経験だが、日頃の稽古と、津谷木歌舞伎の過去の舞台映像を見て研究を重ね、本番は堂々の立ち居振る舞いを見せた。陽大さんは「緊張したけど、歌舞伎の面白さが分かった」、もも花さんは「せりふ覚えが大変だったけど、本番は楽しめた」、敬大さんは「また舞台に立ちたい」と笑顔で答えた。










