カスハラ防止へ条例案 埼玉県、12月議会に提出へ 優秀な取り組みを表彰する制度を都道府県で初めて規定、罰則は設けず
埼玉県は21日、新たな条例として、顧客から暴言や過度な要求などを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)から事業者や就業者を守るための防止条例案を、12月1日開会の県議会12月定例会に提出すると発表した。優秀な取り組みを表彰する制度を都道府県で初めて規定し、罰則は設けない。同日の会見で大野元裕知事は、中小企業が多い本県の特性を踏まえ、「負担を軽減した形で防止対策を行っていただく方が効果的」と述べた。施行日は来年7月1日を予定し、周知に努める。
県は6月に骨子案を示し、7~8月に県民コメントを募集。99・8%が中小企業・小規模事業者、従業者数9人以下の事業所が73・4%を占める本県の特性を踏まえ、県独自部分として就業者や事業者の定義に、改正労働施策総合推進法などではカバーしていないボランティア(団体)や個人事業主を含めたほか、事業者団体(特定の事業分野の共通の利益を目指す団体)を定義した。
条例案では、(1)顧客などの言動(2)社会通念上許容される範囲を超えたもの(3)就業者の就業環境が害されること―の3要件がそろったものをカスハラと定義。「社会全体でカスハラの防止を図る」「何人もカスハラを行ってはならない」など四つの基本理念を定めた。
顧客などは「就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努める」など各主体の責務を定め、事業者や就業者は基本方針の作成・公表、順守などを果たすべきだとした。防止施策の総合的な実施を県の責務とし、情報収集・提供、啓発活動などを主な施策に挙げた。成立すれば、都道府県では東京、北海道、群馬、愛知、静岡に次いで6例目。三重県は罰則付きの条例制定を目指している。
罰則を設けなかったことについて、大野知事は「労働者にとって罰則があった方が心の支えになると専門家から意見があった一方、対象とならないグレーゾーンのカスハラが生まれかねない。プラスのインセンティブを活用した方が自発的な行動変容につながるといった意見があった」と議論の経緯を説明した。
■12月県議会は来月1日開会 一般質問は5、8~11日
県議会の議会運営委員会(横川雅也委員長)は21日、12月定例会の日程を12月1~19日の19日間とすることを決めた。大野元裕知事や県執行部に対する一般質問は5日、8~11日の5日間。会派別質問者は自民9人、民主フォーラム、公明が2人、県民、共産が各1人。常任、特別委員会は15~17日に行われる。










