埼玉新聞

 

「核兵器は悪魔の道具」 非核三原則の見直し検討を批判 埼玉・本庄で被団協の田中さんが講演

  • 講演する日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中煕巳さん=23日午後、本庄市早稲田の杜のJA埼玉ひびきの本店ホール

    講演する日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中煕巳さん=23日午後、本庄市早稲田の杜のJA埼玉ひびきの本店ホール

  • 講演する日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中煕巳さん=23日午後、本庄市早稲田の杜のJA埼玉ひびきの本店ホール

 昨年ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表委員田中煕巳さん(93)=新座市=が23日、本庄市早稲田の杜(もり)のJA埼玉ひびきの本店ホールで行われた「第47回戦争と平和を考える市民のつどい」で講演し、「核兵器は悪魔の道具で、戦争では絶対に使ってはいけない」と語った。非核三原則の見直し検討について強く批判した。

 田中さんは満州(現中国東北部)生まれ。1945年8月9日、旧制中学校1年生だった13歳の時、長崎市の爆心地から約3・2キロの自宅で被爆した。被団協の事務局長を計約20年間務め、2016年には若い世代と連携し「ヒバクシャ国際署名」を開始。17年からは代表委員を務める。

 田中さんは、「ノーベル平和賞受賞から核廃絶へ―被爆80年、被爆の実相を次世代へ、私たちに何ができるか―」をテーマに講演。被爆時は奇跡的にけがはなかったものの、3日後に爆心地に向かうと黒焦げの遺体を目の当たりにし、伯母を荼毘(だび)に付すなど、親族5人を亡くした。「核兵器は兵器ではなく、悪魔の道具で、戦争で絶対に使ってはいけない」と強調した。

 多くの被爆者が核兵器の恐ろしさを伝える地道な活動を継続してきた結果、被団協はノーベル平和賞を受賞した。核兵器を使ってはいけないという「核のタブー」を国際的に築き上げてきた一方で、「最近は、核のタブーがタブーではなくなってきている」と強い危機感を持っている。

 核兵器を包括的に禁止する「核兵器禁止条約」について、「核兵器で大変になることを知っている唯一の被爆国である日本が参加していない」と非難。核保有国の抑止力に頼ってはいけず、「米国の核兵器で日本は絶対に守ってもらえない。国を守るには戦争をしないこと」と訴えた。

 自民党安全保障調査会は20日、高市早苗首相の指示を踏まえ、国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定に着手。平和国家として堅持してきた「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則の見直しの検討について、田中さんは講演後の取材に「言語道断」と批判した。

 約100人が集まった会場では、いずれもレプリカのノーベル平和賞賞状やメダルが展示されたほか、広島の高校生が描いた原爆の絵も展示された。

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