食肉中央卸売市場を廃止 さいたま市 国道16号沿いに移転し道の駅と一体整備計画から一転 道の駅整備は継続
さいたま市見沼区宮ケ谷塔の国道16号沿いに「道の駅」と一体的な整備を計画していた市食肉中央卸売市場・と畜場(大宮区吉敷町)について、さいたま市は19日、廃止する方針を示した。計画当初は機能停止できない現状や国の見解などから、現在地再整備や廃止ではなく「移転再整備」が望ましいとして2028年をめどに移転、新設するとしていたが、市は工事費高騰による事業費増加や食肉流通形態の民営化が進んだ点などを方針転換の理由に挙げた。「道の駅」整備は継続して進め、33年度の開業を見据える。
食肉中央卸売市場・と畜場は現在の場所に1961年に開設。60年を迎えた2021年3月に市が策定した基本計画では、建物や設備の老朽化が進み、施設の維持や改修費用が増加している一方で、中央卸売市場食肉市場は全国に10カ所しかない大変重要な施設であることから「廃止」は困難で、「移転再整備」を進め、対米や対欧州連合(EU)輸出認定施設を目指すとしていた。
19年10月には市が、食肉市場の移転予定地と国道16号を挟んだ場所に地域経済活性化拠点として「道の駅」開業を目指す方針を発表。清水勇人市長は当時の定例会見で「流通と消費の場が隣接することで相乗効果が期待できる」と意欲を示していた。
市食肉市場・道の駅施設整備準備室によると、基本計画の実現性を高めるため、食肉関連企業など約70社に市場調査や他市場への視察を行った結果、当初見込んでいた黒字化が困難なことが判明した。
資材価格の高騰や労務費上昇は現在進行形で進んでいる点も影響し、施設整備費は基本計画時の232億円から約2倍の453億円に。事業期間を30年間としたトータルコストは1190億円に上り、818億円の一般財源負担額に対して市内利用者は18%にとどまるなど、費用対効果が低いことが分かったという。
20年の改正卸売市場法施行により、中央卸売市場の自由化が進められ、全国の食肉の市場経由率は8・1%にとどまり行政が担う役割が薄れてきている点も要因となった。
食肉市場は移転時期としていた28年度をめどに廃止となる予定。現状で卸売業者ら約80人が働いていて、市の担当者は「市場関係者の要望などを聞きながら丁寧に説明し、進めていきたい」と述べた。
食肉市場の移転予定地は立地特性の良さが期待されることから活用を検討する。市は「道の駅」整備計画を策定。周辺環境の変化や関係機関との協議・調整などから開業は当初の28年度から33年度に先送りになる見込みという。
同日、開かれた市議会総合政策委員会では食肉市場の廃止決定に市議から質問が相次いだ。基本計画から移転断念までの4年間の外的要因を問われ、市の担当者は「当時、見込んでいた銘柄牛を持ってこられなかったのが一番大きい。計画の見込みが甘かったかと言われれば、そうだと思う」と答弁。基本計画の策定が改正卸売市場法施行の翌年だったこともあり「社会を取り巻く環境の変化を把握しきれなかった」とも述べた。










