「一生使える」グラブを提供 埼玉・朝霞の早川 明治から続く皮革のプロ 一つ一つ手作りで
先日、ラジオ番組に出演していた元プロ野球選手がこんな話を披露していた。所属球団の寮で自分が使用していたグラブが盗まれたことがあり、その際、思わず「100万あげるから、戻してほしい」と叫んだそうだ。野球選手にとってグラブとは、かけがえのないものなのだろう。
そんなグラブを一つ一つ手作りで作り続けている。作業場は朝霞市内の住宅街の一角にある。牛革の型抜きから始まり、革の厚みを調整。ひもを通す穴を開ける。専用のミシンで縫製し、内側に革を縫い付けてひもを通す。完成するまでの一連の行程は職人1人で3日間かかるという。
創業は明治時代にさかのぼる。代表取締役の早川和孝さん(51)は4代目。曽祖父が自宅を作業場に皮革のボストンバッグを製造したのが始まり。その後、メーカーからグラブの発注を受けるようになり、事業は祖父と父親に受け継がれ、父親が形態を自営から会社組織に切り替えた。
早川さんは大学卒業後、サービス業の会社に就職していたが、父親が体調を崩したため、32歳の時に会社を継いだ。今はメーカーからの受注が8割で、残りがオーダーメイドグラブ。月間の生産量は約150個。オーダーメードの発注は少年野球から高校生、社会人の草野球まで幅広い。
使用する牛革は北米産のステア(去勢した雄)とキップ(子牛と成牛の中間)。ステアは強度があり長持ちする、キップはきめ細かくて軽い。メーカー受注の場合、長持ちさせるため、ステアを使用する。早川さんは「メンテナンスさえできれば、一生使えます」と太鼓判を押す。
プロで同社のグラブを使用している選手はいないが、今春の選抜の全国高校野球選手権で初出場した浦和実業の選手が同社製を使用していたという。早川さんは「小さい頃からうちの製品を使用してくれれば、プロになっても使ってくれる。それが楽しみです」と夢を膨らませる。
【メモ】 早川 朝霞市栄町2の6の28▽電話048・461・2446










