「つい通ってしまう」笑顔で出迎え50年 さいたま・東大宮の「屋台ラーメン北国」 肩を寄せて麺すすり…憩いの場に 魅力は「飽きずに毎日でも食べられる味」
「おかえりなさい」。夕暮れになると、さいたま市見沼区のJR東大宮駅東口から徒歩数分の間借りスペースで「屋台ラーメン北国」の店主小沢秀信さんが笑顔で出迎える。50年以上同駅で店を構え、仕事を終えたサラリーマンや学生など、帰宅前の地域住民らの憩いの場になっている。「ここのラーメンを食べて仕事や学業を頑張ろうと思ってもらいたい」との思いで、80歳になった今もラーメンを作り続けている。
■遠方からも
本格的な夜の冷え込みを感じ始めた土曜日の午後6時ごろ、小雨が降る中、小沢さんが運転するトラックがスープの匂いを漂わせながら駅東口の薬局駐車場に到着した。顔なじみの常連客とあいさつを交わしラーメンの準備に取りかかると、常連客らは慣れた手つきで椅子を並べる。麺をゆで、自宅で7~8時間煮込んできたスープを入れると営業開始だ。
1時間ほどたつと10人以上の行列ができたが、無駄のない手に染み付いた動きでさばきつつ一人一人と向き合う。客同士は肩を寄せ合いながら、前かがみにすする。地元の女性(70)は「店主とは何でも話せる。屋外で食べるラーメンは、よりおいしく感じる」と魅力を語る。小沢さんのラーメンに引かれ、遠方から来る常連も多くいる。栃木県小山市の会社員男性(56)は開店の1時間ほど前から並び、しょうゆラーメンに天ぷら、ニンニクをトッピング。「飽きずに毎日でも食べられる味で、つい通ってしまう」と魅力を語る。
■1杯500円
ラーメンはしょうゆ、みそ、塩味があり、1杯500円。値段は20年以上変えていない。トッピングはゆで卵とニンニク、ラーメン店では珍しい天ぷらがそれぞれ50円。営業時間は午前2時ごろまでとしているが、いつも午前0時ごろには材料が尽きるという。スープは午前7時半から弱火でじっくりと煮込み、飽きない味付けになるように味見を繰り返している。
■週3日の営業
ラーメン店を志したのは24歳のころ。昼に電気設備の仕事をしながら、大好きなラーメンの店を出したいと考え夜間に修業。店名の「北国」は経験を積ませてくれた店舗から名付けた。当初は東大宮駅付近で店舗を構えつつ屋台でも営業していたが、「距離感が近く、いろんなお客さんと話せるのが自分に合っていた」と感じ、屋台だけに注力するようになった。
5年前までは週5日、朝の5時まで営業していたが、肝臓の病気の影響で週3日に減らした。それ以来2人の息子や孫が手伝ってくれるようになった。約1年半祖父を支える孫の萩原ひなのさん(17)は、「お客さんの顔や好き嫌いも覚えている。自慢のおじいちゃんです」と笑顔。仕事後の賄いラーメンが毎回の楽しみだという。
物価高もある中、500円から値上げする予定はないという。「ここまで生活させてもらったのは、お客さんのおかげ。お客さんが喜んで帰ってくれたら、こちらも気持ちがいい。いろんな人が和気あいあいとつながれる場所でありたい」。湯気の向こうに小沢さんの笑顔があった。
【屋台ラーメン北国】 さいたま市見沼区東大宮5の38の3。木・金曜日は午後7時半から、土曜日は午後6時から。材料がなくなり次第終了。










