クマの人身被害、埼玉でも起こり得る…猟友会も不安視「餌求め住宅地に現れるのでは」 鳥獣の狩猟、県内で解禁 人命や農作物を守る使命…気を引き締める秩父の猟友会
県内で15日、鳥獣の狩猟が解禁された。秩父市吉田地域には、西秩父猟友会の吉田支部の猟師ら20人以上が集まり、解禁式で安全狩猟を誓った後、午前8時にニホンジカやイノシシを狩りに山林へ出発した。今年は全国各地でクマ被害が相次ぎ、県内でも目撃情報が多数寄せられている。猟友会の黒沢春男会長(53)は「クマの増加で生態系が崩れていくと、全国で多発している人身被害が今後、県内でも起こり得る。狩猟解禁は、駆除や緊急銃猟での緊張感とは違うが、人命や農作物を守るわれわれの使命を、仲間としっかり共有したい」と気を引き締めた。
■川口や熊谷からも
県は11月15日から来年2月15日まで、鳥獣保護管理法施行規則によって選定された鳥獣46種類の狩猟を捕獲禁止区域外で解禁している。ニホンジカやイノシシの狩猟は、秩父市など指定された市町村でわな猟に限り来年2月16日以降も1カ月間行える。
この日の吉田地域での狩猟は、地元猟師のほか、川口、熊谷市などの会員も参加した。吉田地域や小鹿野町内を狩猟エリアとする西秩父猟友会の現在の会員数は計7支部で140人。黒沢会長は「若者が多数所属している支部もあるが、高齢化に伴う狩猟者数減少は年々深刻化していて、今は地域外の猟師の協力は不可欠」と語る。
秩父地域では、野生鳥獣による農作物被害が毎年後を絶たない。猟友会吉田支部は昨年、山林のニホンジカを、わな猟を含めて200頭以上捕獲した。同支部会員の黒沢彰さん(49)は「家庭菜園が多い地域なので、シカ、イノシシ、サルによる被害が目立っている」と説明。過疎化の進行によって、空き家や手つかずの畑が年々増えており、「今後はクマも餌を求めて住宅地に現れるケースが増えてくるのではないか」と不安視する。
■県の準絶滅危惧種
狩猟が認められる鳥獣の中には、ツキノワグマも対象に含まれているが、県では安定的な個体数維持の観点から、山奥でクマを目撃した場合は狩猟者に狩猟自粛を要請している。県みどり自然課によると、県内のツキノワグマの生息数は2020年の調査で推定150~170頭で、県レッドデータブックで準絶滅危惧に分類されている。本年度の県内クマ出没情報は13日時点で128件と、前年度の108件を上回っている。
改正鳥獣保護管理法が9月に施行され、市町村の判断で猟師に市街地での発砲を認める「緊急銃猟」が制度化されたことを受けて、秩父地域の猟友会役員と自治体は現在、手順を確認するマニュアル制作の準備を進めている。
黒沢会長は「クマへの発砲は、一発で仕留めなければ自分の命を落とす危険性があるため、相当の覚悟と腕が必要。全会員が務まる任務ではないので、自治体と慎重に話し合っていきたい」と話した。










