埼玉新聞

 

さいたまで自動運転バスの実証実験…交通量多い都市部では県内初 13日まで 試乗する市民の反応も反映 車道を走る自転車、強引に追い越す車…周囲の情報を判断、減速繰り返す場面も 運転手からの声は

  • 自動運転ソフトウエアが分析した路面状況がモニターに映し出される

    自動運転ソフトウエアが分析した路面状況がモニターに映し出される=10月27日、さいたま市中央区

  • ハンドルに手をかざした状態で姿勢を維持している運転手

    ハンドルに手をかざした状態で姿勢を維持している運転手=10月27日、さいたま市浦和区

  • 自動運転ソフトウエアが分析した路面状況がモニターに映し出される
  • ハンドルに手をかざした状態で姿勢を維持している運転手

 持続可能な公共サービスの実現を目指し、市民向けの大型バスの自動運転実証実験が4日、さいたま市内で始まった(13日まで)。県内では和光市と深谷市に続いて3市目で、交通量が多い都市部の幹線道路での実験は、県内初。10月27日に埼玉大学(さいたま市桜区)で行われた出発式では、清水勇人市長や報道などの関係者らが試乗会に参加。清水市長は「乗り心地もよく、技術の高さに驚いた。将来的な運転手不足の解消に向けて、自動運転の実装を目指していく」と話した。

 今回の実証実験は、運転手が同乗し、必要に応じて手動で運転する自動運転レベル2で実施する。さいたま市では、公共交通サービスの利用者が増加している一方で、運転手の高齢化や2024年問題などを背景に、人手不足が深刻化。29年度中をめどに、特定の条件下で自動運転システムが車の全ての運転操作を行うレベル4の実装を目指している。

 実験のルートは、国道463号(埼大通り)のJR北浦和駅西口から埼玉大学までの約3・7キロ。交通量が多いほか、1日に約300本の路線バスが運行しており、学生や地域住民の利用者も多いことから、技術の安全面、経営面の観点からも課題を検証する。

 使用されるバスはいすゞ自動車製で、実験中の定員は23人。信号機や標識を確認するカメラや、バス周辺の車両や障害物を検知する赤外線、ミリ波を活用したレーダーなどが搭載されている。高精度の3次元マップにルートを入力し、自動運転ソフトウエアが周囲の情報から判断しながら、ルートに沿って自動で運転するという。

 市民向けの自動運転実証実験では、試乗する市民の反応などから、社会に自動運転技術を受け入れてもらう観点での課題も明らかにする。

◇スムーズさに課題も

 10月27日の試乗会に、記者も参加した。車内の様子を観察すると、自動運転に必要な設備のほか、ソフトウエアが判断した路面状況を映すモニターが設置されていた。そのため、座席数は通常の路線バスよりも少ないが、狭いような印象は受けなかった。

 運転は、発車時やブレーキなど揺れは少なく、運転技術は人の運転と遜色ない。一方で感じたのは、減速する回数の多さだ。ルートとなった埼大通りは、片側1車線で自転車の通行量も多い。試乗時には、車道を走る自転車が少しでもバスに近づくと、減速を繰り返す場面も見られ、バスを強引に追い越す車の姿も見られた。

 今回の実験中に、運転手がハンドルに触れたのは、路肩に止められた車や、車道を走る自転車を追い越すとき。優先されるべきは安全運転だが、スムーズな交通という点では課題を感じた。

 また、運転手は急な運転操作に対応するため、ハンドルに手をかざした状態を維持しなくてはならない。運転手からは「この姿勢をキープするだけで腕が震える。大変だ」との声も上がった。

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