戦後80年に平和を祈る ジャズ奏者、80歳の坂田明さん 埼玉・熊谷で初のライブ開催 11月2日に八木橋百貨店のホールで
蕨市在住で、日本を代表するジャズサックス奏者の坂田明さん(80)が11月2日、熊谷市内では初のライブを開催する。トリオ「坂田明SOS」として出演。戦争で引き裂かれた男女の愛を描いた1970年のイタリア映画「ひまわり」を上映し、坂田さんのトークも行う。戦後80年の節目に、国際的な活躍を続ける傘寿の演奏家が、平和への祈りを届ける。同市仲町の八木橋百貨店8階カトレアホールで、午後1時半開演。
「映画『ひまわり』と坂田明SOSコンサート」は6月、坂田さんの出身地である広島県呉市で行われたのを皮切りに、各地を巡るライブツアーの一環として企画。「ひまわり」は2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻後、ヒマワリ畑の名シーンがウクライナで撮影されたとされることから、国内外で上映の輪が広がった。坂田さんは「映画とライブを組み合わせたイベントを開きたがっていたいとこが一昨年亡くなってしまったので」と、遺志を継ぐことを決意。熊谷開催は、長年の交流がある市内在住の随筆家山本ふみこさんと、夫で映画作家の代島治彦さん(67)の招きで実現した。
■核抑止論に怒り
坂田さんが反戦のメッセージを込めたライブに臨むのは、幼い頃から広島原爆の惨禍を身近に見聞きしてきたからだ。「焼け野原になった広島のまちも知っているし、呉にも被爆者や被爆2世が暮らしていた。そうした環境で育ってきたから」と言う。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞受賞から1年がたっても、核兵器を巡る状況は好転する兆しさえない。坂田さんは「日本人を含めて、核兵器の被害実態を知らない人がほとんど。だから、核を使おうなどと言うばか者が出てくる」と、一部の国内政治家や世界の指導者が掲げる核武装論と核抑止論に怒りを示す。
■プランクトン化
広島大学で水産学を学んだ坂田さんは長年、プランクトンのミジンコ研究も続けてきた。水中に浮遊して生活するプランクトンは、遊泳能力がほぼない。坂田さんは、現代の状況をプランクトンになぞらえて批評。「間違っていても、大きな声で主張する一握りの者が力を持つ時代になってしまった。大部分の人たちは、流されるがまま。人間社会そのものが、プランクトン化している」と嘆く。
坂田さんは今年のツアーから、長男でドラマーの学さん、ピアニストの大森菜々さんを加えた「坂田明SOS」として活動している。映画の上映、山本さんとのトークに続いて行われるライブでは、ヘンリー・マンシーニ作曲の「ひまわり」や武満徹作曲、谷川俊太郎作詞の「死んだ男の残したものは」のほか、自作曲も演奏する予定だ。
「平和だからこそ、音楽ができる。『新しい戦前』と言われるように、残念な世の中になってしまったが、希望を捨てずに生きていきたい。そして、人格の陶冶(とうや)に努めれば平和もついてくるはず。そんなことを考えてもらえれば」。坂田さんは、コンサートで伝いたい思いを語った。
入場料は前売り券4千円、当日券5千円。問い合わせは、うんたった(電話080・5407・8739)へ。










