埼玉新聞

 

クマ出没に注意 11月から紅葉が本格化…秩父市、観光客らに警戒を呼びかけ 住宅や畑が点在する場所でも目撃 ハイキングコース内に看板も新たに設置 「外出前に目撃情報や出没マップのチェックを」

  • 市職員がハイキングコース内に新たに設置したクマ出没注意の看板

    市職員がハイキングコース内に新たに設置したクマ出没注意の看板=24日午後、秩父市下影森の琴平神社付近

  • 市職員がハイキングコース内に新たに設置したクマ出没注意の看板

 2025年度はクマによる人的被害が全国各地で相次ぎ、死者数は23日現在で9人と過去最多を更新した。秩父市内での人的被害は18年10月以降確認されていないが、本年度のクマ目撃情報は23日現在で45件と、既に前年度の件数を上回っている。例年、11月ごろまで目撃情報が多く寄せられていることから、市はハイキングコース内に「クマ出没注意」の看板を新たに設置するなど、紅葉シーズンに訪れる観光客らに向けて警戒を呼びかけている。

 市生活衛生課によると、市民らから寄せられた市内のクマの目撃情報は、24年度が37件だったのに対し、25年度は10月初旬に40件を超えた。市内のクマ目撃情報の最多件数は、23年度の73件。

 本年度の目撃情報は、「山間部に集中している」という特徴は例年と変わらないが、前年度と比較すると、秩父鉄道影森駅から約1・5キロ圏内の秩父市日野田町や上影森など、住宅や畑が点在する場所での目撃が目立っている。

 今月10日、日野田町で体長1・5メートルほどのクマ出現が確認できたことから、市観光課は同日、近隣の羊山公園から影森までの尾根道をたどる琴平丘陵のハイキングコース内に、「クマ出没注意」の看板を新たに2カ所設置した。

 毎年11月に入ると、秩父ミューズパークや大滝地区などでモミジの紅葉やイチョウの黄葉が本格化し、各地でハイキングイベントや祭り行事が多数開催されている。同課の担当者は「外出前に市ホームページの『クマの目撃情報』や、県の『ツキノワグマ出没マップ』などを入念にチェックし、身を守る意識を高めてほしい」と呼びかけている。

 市内のクマ目撃情報が前年度より増えた理由について、市生活衛生課の担当者は「『クマらしきものを見かけた』という情報提供も多く、イノシシやカモシカなどの野生鳥獣の可能性も含んでいるため、クマの個体数増加や行動範囲拡大につながっているとは一概に言えない。近年、全国でクマ被害が相次いでいることもあり、警戒を強めている住民は増えている」と説明する。

 市はクマ出没を確認した際、防災無線や安心・安全メールで随時情報を発信している。清野和彦市長は21日の定例記者会見で、「深夜の時間帯は寝ている方への配慮のため、防災無線などでの発信は控えているが、『不安なので知らせてほしい』との声が一部あるため、検討したい」と話していた。

■県内のクマ出没情報

 県みどり自然課によると、クマの出没情報は秩父地域や飯能市、小川町など県北西部を中心にあり、本年度は23日現在、109件で、前年度の108件を既に上回った。クマによる人的被害は、2024年8月に小鹿野町両神小森の70代女性が自宅敷地内で襲われ、顔などを引っかかれ重傷を負った。18年10月には秩父市三峰の登山道で登山者がクマ2頭に遭遇して両手に軽傷を負った。20年の調査では、県内に推定150~170頭のツキノワグマが生息している。

ツイート シェア シェア