創業80年の重み実感 サイサン新社長、川本知彦氏に聞く 新エネルギー、海外も注力
液化石油(LP)ガスのサイサン(さいたま市大宮区)は21日、創業80年の節目を迎えた。電気や都市ガスを含む「ホーム・エネルギーパートナー」として持ち株会社ガスワンホールディングス(同区)傘下の基幹部門を担う。今月1日からは前副社長の川本知彦氏(52)がトップに就任。飲料水事業を含むマルチサプライヤーの展望を聞いた。
―社長就任から3週間。
「創業80周年の節目でもあり、社会インフラを支える企業として日に日に責任の重みを感じている」
―業界を取り巻く環境は。
「今後少子化で競争が激しくなるのは必至。ただ国の『第7次エネルギー基本計画』にある通り、石油や石炭と比べて二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく災害時にも安定供給できる“最後のとりで”だと自負している」
―地域のレジリエンス向上に果たす役割は大きい。
「災害時の避難所機能を想定し現在、全国の公共施設や学校の体育館などでGHP(ガスヒートポンプ)空調の導入が進んでいる。国内の家庭用燃料の4割はLPガスで軒先在庫(備蓄)の多い分散型エネルギー。停電や都市ガスの停止時でも給湯や調理、暖房に使えるのは大きな強みだ」
―温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラル(CN)対策は。
「LPガスは相対的にクリーンだが、化石燃料である限り即時ゼロは困難。過渡期施策だが、カーボンオフセットLPガスと完全カーボンニュートラル電気を推進している。県内では埼玉西武ライオンズ(ガス)や埼玉りそな銀行(電気)などで採用。2045年までには目標を達成したい」
―マルチサプライヤーの強みをどう生かす。
「電気や飲料水とのセット割引などサービスの強化を図る。配送や点検も自社で担うので高齢者宅の見守りや日用品の宅配サービスなども一つの案だろう」
―海外戦略は。
「昨年にアフリカ・ルワンダのUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と難民キャンプ向けのLPガス設備で日系企業では初めて契約した。いまだ世界の約23億人がまきや木炭で生活しており、森林保全や重労働からの解放、煙・すすによる健康被害低減などに貢献したい。ベトナムやモンゴルなどアジア8カ国の実績を足がかりにアフリカ市場で世界トップを目指す」
―重点施策は。
「約1万6千社あるとされる国内(LPガス)事業者。後継者不在で承継に悩む経営者も多い。個々の事情に寄り添い連携を進めたい。16年および17年の完全自由化に伴う電力・都市ガス市場はまだまだ拡張の余地がある」
―独自カラーをどう打ち出す。
「大規模な方針転換はない。これまで3代で築いてきた『お客さま第一主義』『凡事徹底』で継承しつつ、外部環境の変化に応じた柔軟かつ迅速な対応を心がけたい」
■川本知彦(かわもと・ともひこ)
1973年9月、さいたま市出身、96年3月、獨協大法学部を卒業後、リンナイに入社。海外事業本部に配属され、98年9月から約3年半、香港に駐在した。2002年3月にサイサンに入社。営業本部長などを経て12年11月から副社長。今月1日から現職。










