埼玉新聞

 

埼玉でブナの実が大凶作…5%以下の落下密度 クマの人里出没に警戒 主要な栄養源失い 県が調査

  • 堅果類豊凶調査の様子(県提供)

    堅果類豊凶調査の様子(県提供)

  • コナラの堅果(県提供)

    コナラの堅果(県提供)

  • 堅果類豊凶調査の様子(県提供)
  • コナラの堅果(県提供)

 埼玉県は7日、ツキノワグマの出現予測などに活用される、ドングリなどの堅果類豊凶調査の結果について、コナラが凶作、ブナが大凶作であったと公表した。本年度も県内で、多くのクマの目撃情報が寄せられており、餌であるドングリが凶作であることから、クマが人里への出没が増加する可能性もあるという。県では、果樹の管理徹底など、クマを人里に寄せ付けないために、注意喚起をしている。

 県みどり自然課によると、同調査は8月26~28日にかけて、ツキノワグマの目撃情報の多い、秩父市と飯能市の9地点で実施。ミズナラやブナなど27本の調査木を対象に、目視で樹冠下に落下する果実の密度(落下果実密度)を調べ、90%以上を大豊作、50~90%を豊作、25~50%を並作、10~25%を凶作、0~10%を大凶作としている。

 ツキノワグマにとって、堅果類の実は秋から冬にかけての主要な栄養源となることから、凶作になると人里に出没する可能性が高まるとされており、県ではクマの出没予測などに活用するため、2024年度から調査を始めていた。

 本年度の調査結果によると、ミズナラの落下果実密度が53・7%(前年度66・1%)、コナラが24・2%(同59・8%)、ブナが4・9%(同38・3%)と、ミズナラは豊作だったものの、コナラ・ブナについては凶作、大凶作と分かった。

 同課担当者によると、凶作の要因について「原因は不明だが、一般的には豊作の年の翌年は凶作になりやすいとされている」と指摘。「目撃情報が増加していることから、クマの個体数が増えていることも考えられる。ミズナラも豊作だが昨年よりは量が減っており、全体的な減少はクマの行動にも影響があるのではないか」と懸念を示した。

 県内では、9月末時点で76件のツキノワグマの目撃情報の報告があり、23年度から引き続き高い水準を推移している。県では、クマを人里に寄せ付けないためにも、果樹や果実をそのままにせず、落下した果実も放置しないことや、生ごみは屋内で保管し、収集日の当日に出すことを呼びかけている。また、草むらや、やぶなどの手入れを行い、クマが隠れる場所をなくすことにも注意している。

 同課担当者は「クマが人里に餌があることを覚えると、繰り返し来るようになるので、寄せ付けない対策を心がけてほしい」と喚起した。

ツイート シェア シェア