さいたまで自動運転バスの実証実験 交通サービスの維持、向上へ 北浦和駅から埼玉大学間で試走 運転手同乗の「レベル2」
さいたま市で9月29日、場所や天候、速度など特定の条件下で、人による運転操作なしで自動運行する(レベル4)路線バスの実証実験が始まった。バスをはじめとした運輸業界では近年、時間外労働の上限規制など「働き方改革」が進む一方で慢性的な人手不足や人件費の高騰が続く。さいたま市内でも一部路線で廃止や減便が発生している。市内の高齢化率は2045年には3割を超えるとの予測もあり、公共交通サービスの維持・向上が喫緊の課題となっている。
■社会的受容も検証
今回の実証実験は国土交通省の2025年度「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」に採択され、自治体やバス運行事業者などが合同で行う。県内では深谷市と和光市でも検証している。
さいたま市内では、特に学生利用の多いJR北浦和駅西口―埼玉大学間(片道約4キロ)の国道463号(浦和所沢バイパス)で実施。自動運転操作を習得した熟練運転士が同乗し、状況に応じて手動運転に切り替える「レベル2」で試走する。認知や予測・判断、ハンドル操作などドライバーに必要な能力を自動運転システムが代わって行い、技術面はもちろん、経済的整合性や社会的受容の視点で各種データを収集する。
■最新のAI技術活用
従来の自動運転技術は特定のアルゴリズム(計算手法)に基づき制御するのが一般的で、歩行者の急な飛び出しなど想定外の事態に対応するのが難しかった。
開発競争で米国や中国などの海外勢に遅れを取る中、国内自動車メーカーでも人工知能(AI)の活用が拡大。周囲の状況把握から車両操作までAIが一括して行う「E2E(エンド・ツー・エンド)」方式に移行している。大量のデータをAIが学習して最適解を導き出すことで、人通りが多い交差点などでも柔軟な対応が可能だ。
■安全対策が鍵
さいたま市の実証実験には定員79人(着席29人)の大型車両を使用。赤外線の反射光で対象物までの距離や形を計測するレーザーや信号機の灯色・標識を把握する高画質カメラ、3次元地図上で走行軌跡を把握する衛星測位システム(GNSS)などの最新機器が装備されている。
米中では覇権争いの激化で安全対策よりも技術開発を急ぐあまり、死亡事故も発生。国内での実装には、十分な安全対策や万が一事故が発生した場合の補償などクリアしなければならない課題は多い。
さいたま市では運行主体の西武バス(所沢市)、国際興業(東京都中央区)のほか、委託先のオリエンタルコンサルタンツ(同渋谷区)、技術支援のアイサンテクノロジー(名古屋市)、A-Drive(横浜市)が参画。今月24日までの平日に準備走行が行われ、その後、交通分野の専門家などの関係者試乗を実施。来月には一般利用者を乗せた実験も計画している。29年度末までに同路線の一部車両に「レベル4」の本格実装を目指す。










