埼玉新聞

 

高校の理科教諭、夢の一つが「海外活動」 南アフリカで実験見せると…うれしくなる最高のリアクション 「理科の面白さを伝えられるチャンス」

  • 地元の子どもたちと交流する池田岳郎さん

    地元の子どもたちと交流する池田岳郎さん=8月5日、南アフリカ・リンポポ州のマステック・カレッジ

  • 地元の子どもたちと交流する池田岳郎さん

 県立岩槻北陵高校理科教諭の池田岳郎さん(37)は夢リストの一つに、「1年以上、海外で暮らす」を記していた。南アフリカの科学振興を目的とした、国際協力機構(JICA)の約1年7カ月間にわたる長期派遣の募集を知り、「現場に求められていることと、自分がやってみたいことが一致している」と思い、現地での活動を希望した。

 上尾市出身。県立熊谷高校、早稲田大学先進理工学部を卒業後、高校教諭の道に進んだ。海外で授業をするのは初めての体験だったが、「理科の面白さを伝えられるチャンス」に心が躍った。

 南ア・リンポポ州にあるヴェンダ大学付属のヴワニ科学資源センターを拠点に、2024年8月から業務を開始。同センターに児童生徒を招いたり、州内の教育施設に出向いたりして、南アの小学生から高校生の理科実験教育を支援している。

 日本の学校の理科室には当たり前に備わっているはずのガスバーナー、フラスコ、試験管といった実験器具は、同州の学校にほとんどない。「いかに日本の学校教育が恵まれているのか」を改めて実感した。

 同センターに常駐している指導者は所長1人のみ。教育者を目指す地元のインターン生は15人ほどいるが、環境、金融、農業など専門分野がばらばらで、理科実験に関する知識や技術レベルに差があった。

 インターン生は1~2年間隔で入れ替わるため、「今の体制では技術の継承が困難」と池田さんは考えた。今年5月以降、インターン生の協力を得ながら、数々の科学実験の様子を撮影し、動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信する取り組みを始めた。

 「映像で共有すれば、今後の実験マニュアルの作成・改善に役立つし、大学の宣伝にもつながる」

 英語は堪能な方だが、現地の人は英語と現地語(主にヴェンダ語)を交ぜて会話するため、聞き取りに苦労することも多い。地元民の対応は親切で、一緒に食事をしたり、ダンスをしたりで休暇を満喫できている。とうもろこし粉と水を混ぜて練り込む現地の主食「パップ」や、ウシの内臓の煮込み「モゴドゥ」の調理法も習得した。

 「実践の授業が少ない現地の子どもたちは、実験を見せると、最高のリアクションを見せてくれるので、こっちもうれしくなる。日本と中国の区別がついていない生徒も多いので、滞在中に日本の文化も伝えていきたい」

ツイート シェア シェア