埼玉の高校教諭、科学実験を披露 南アフリカで理科の魅力広める 勢いよく噴き出す無数の泡、会場から驚きと喜びの声上がる
三角フラスコの中から、色の付いた無数の泡が勢いよく噴き出すと、静まり返っていた会場から驚きと喜びの声が上がった―。8月4日、埼玉県立高校の教諭が南アフリカ共和国(南ア)の子どもたち約100人の前で、酸化還元反応などの科学実験を披露した。「理科の魅力を現地の若者に広めてほしい」との使命を受け、岩槻北陵高校の池田岳郎さん(37)、南稜高校の石塚祐貴さん(36)、所沢高校の古屋雅大さん(36)の教諭3人は、埼玉から1万3千キロ以上離れた教育施設の教壇に立った。「子どもたちは実験を楽しんでくれている」と、任務のやりがいを実感している。
県教育委員会は2023年3月に、国際協力機構(JICA)と自治体連携に関する覚書を締結。24~28年の期間、南アの科学振興や理科教育向上のため、現職職員を海外協力隊として長期2人、短期12人、派遣することで合意した。
長期隊員1次隊(任期24年8月13日~26年3月20日)の池田さんと、短期隊員(同25年7月24日~8月23日)の石塚さん、古屋さんは、南アの首都プレトリアから車移動で約6時間の、リンポポ州北東部にあるヴワニ科学資源センターを活動拠点に、現地の児童生徒を対象にした理科講座や科学イベントに参加している。
南アは人口約6400万人で日本の約半分、面積は約122万平方キロメートルで日本の約3倍。アフリカ諸国の中では経済大国といえるが、教育においては国際学力調査58カ国中56位(22年調査)と、低水準にある。
南アの教育事情に詳しいJICA算数教育専門家の板垣暁歩さん(40)によると、公用語として使われている言語がアフリカーンス語など11種あることによる「言葉の壁」や、学年ごとに教員免許が異なる特殊な教育制度による「教員間の連携不足」などが学力向上の妨げになっている。中でも、積み上げ型学習が必要な理数科教育の立ち遅れが目立っている。
また、人種隔離政策「アパルトヘイト」が1991年に廃止されて以降も、社会的・経済的な不平等が根強く残り、地域間で教育格差が生じてしまっていることも、「学力途上」の原因の一つとされている。
ヴワニ科学資源センターのルフノ・タカラーニ所長(37)は、教員や資材不足によって、科学教育の実践的な部分に時間が割けない南アの教育事情を説明し、「彼らは理科好きな子どもたちの望みをかなえるキーマン」と、県教諭の活動に期待を込めた。










