埼玉新聞

 

10歳の妹がインフル、一人で寝ていると…災害発生、きょうだいがいる学校で待機指示中「帰るべきか」 発災後の難しい局面どうする 3千人いる避難所の食料担当者、食料は2千人分で「配るか、配らないか」

  • 防災時の「ジレンマ」を話し合い、意見をまとめ、発表する生徒たち=3日夜、川口市の県立川口工業高校

    防災時の「ジレンマ」を話し合い、意見をまとめ、発表する生徒たち=3日夜、川口市の県立川口工業高校

  • 防災時の「ジレンマ」を話し合い、意見をまとめ、発表する生徒たち=3日夜、川口市の県立川口工業高校

 「あなたは避難所の食料担当者。避難者3千人に対し、確保できた食料は2千人分。配るか、配らないか―」。こんな設問を考える防災講座が3日夜、川口市南前川の県立川口工業高校で定時制の全生徒73人らが出席して行われた。生徒らは発災後に直面する可能性がある課題を、他者の考えを取り入れながら自分の問題として考え、被災時に取るべき行動を考えた。

 県危機管理防災部が進める「若い世代向け防災講座」の一環。県自主防災組織リーダー養成指導員が講師を務め、防災ゲーム「クロスロードゲーム」を用いて災害時に起こりうる悩ましい問題に「YES」「NO」で答え、なぜそう考えたのかを、グループで話し合い、考えをまとめた。

 冒頭の設問に対し、生徒からは「他に食べたい人がいる」「我慢できる」「必要とする人には配るべき」「1家族1食にすれば」などさまざまな意見が出された。講師からは「キーワードは『ジレンマ』。他の人の考えや意見は否定せず、少数意見にも耳を傾け、何が真実か、何が大切かをメンバーと協力して決めてほしい」との考え方が伝えられた。

 その後、生徒らは「あなたは避難者。家族同然のゴールデンレトリーバーを避難所に連れていくべきか」「発災後に学校で待機指示。家で10歳の妹がインフルで一人で寝ている。帰るべきか」など難しい問いを討論し、いざという時に備える考え方をまとめた。避難訓練も行われた。

 生徒会長で4年の中村葉音さんは「いつ起こってもおかしくない地震は本当に怖い。大事な家族の安全確保へ、家具の転倒防止や食事も含めたしっかりとした備えを進めたい」と真剣な表情。同副会長で3年の柴田愛乃さんは「台風19号で避難を経験し、災害時持ち出し袋を家族の人数分備えている。こうした講座の受講でいざという時の備え、判断は変わる。自宅近くの避難ルートを再確認するなど意識を高めたい」と話した。
 

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