埼玉新聞

 

焦って…JR駅前の市有地、不正に売却してしまう 不動産投資会社に心苦しくて 懲戒免職になった職員、今は会社員となった54歳…執行猶予3年に 当時報告した上司に契約中止を指示されず、私利私欲ではないため

  • 【裁判所】さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

    さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

  • JR与野駅の周辺地図(国土地理院HPより)

    JR与野駅の周辺地図(国土地理院HPより)

  • 【裁判所】さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂
  • JR与野駅の周辺地図(国土地理院HPより)

 さいたま市の土地が不正に売却された事件で、有印公文書偽造・同行使の罪に問われた、元市与野まちづくり事務所所長補佐兼区画整備係長の会社員橋爪秀雄被告(54)=鴻巣市=の判決公判が3日、さいたま地裁で開かれ、小池健治裁判長は懲役1年6月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)を言い渡した。

 小池裁判長は判決理由で、公文書に対する信頼を大きく損なわせたほか、さいたま市に対しても土地区画整理に関する信頼を害するなどの悪影響を及ぼしたと指摘。公共財産の処分は「慎重な検討を要するはず。安易かつ軽率に公文書を偽造、行使したことは強い非難に値する」とした。一方で、犯行動機が私利私欲ではないことや、上司に契約の中止を指示されなかったことなどを踏まえて、刑の執行を猶予した。

 弁護側は「個人的な利得目的ではない」とした上で、当時の上司に報告を入れるなど独断的な判断ではなかったことや、懲戒免職処分を受け、被害弁済をしているとして、社会内での更生を求めていた。

 判決によると、橋爪被告は昨年1月9~10日、市内の同事務所で、市のJR与野駅西口土地区画整理事業区域内の市有地を約8580万円で売却する旨の契約書2通で市長印を不正に押印して偽造した上で、うち1通を買い取りを希望する会社側に対して交付して行使した。

 さいたま市は、元職員の橋爪被告が市有地を不正に売却した問題で、大学教授や弁護士ら外部有識者5人で構成する第三者委員会を4月末に設置。市法務・コンプライアンス課によると、8月末までに8回開催した。現在、主に進めている売却の経緯を含めた事実経過の検証を経た上で、市が作成した再発防止策の有効性の検証を行うという。

 清水勇人市長は3日、「二度とこのようなことが起こらないよう、職員の服務規律、法令順守の徹底を図るとともに、第三者委員会による市の内部調査の結果や再発防止策の検証を踏まえ、市民の皆さまの信頼回復に向けて全力で取り組んでいきます」とコメントを出した。

■早く終わらせてしまいたいと考えた(以下、初公判時の記事)

 さいたま市の土地が不正に売却された事件で、有印公文書偽造・同行使の罪に問われた、元市与野まちづくり事務所所長補佐兼区画整理係長の会社員男(54)=鴻巣市=の初公判が6月3日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれた。男は罪状認否で「特にございません」と起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述で、男が不動産投資会社との土地売却の契約が進展せずに心苦しく、業務についても早く終わらせてしまいたいと考えたことから、随意契約に関する担当課の回答を待たずに犯行に至ったと指摘した。

 弁護側は今後、被告人質問などを通して経緯を明らかにし、情状を争う方針を示した。

 起訴状などによると、男は昨年1月9~10日、同事務所で、市の与野駅西口土地区画整理事業の市有地を約8580万円で売却する旨の契約書2通を偽造した上で、そのうち1通について、買い取りを希望する会社側に交付して行使したとされる。

 市は昨年6月、男を有印公文書偽造・同行使の疑いで刑事告発。県警が同年11月に同容疑でさいたま地検に書類送検していた。市は同年8月、男を懲戒免職処分としていた。
 

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