埼玉新聞

 

コンドームは“エログッズ”でなく、子どもの命を守る「お守り」…性感染症が広がる様子を紹介 産婦人科医の「サッコ先生」高橋さん、熊谷で養護教諭らに講演「性教育のゴールは何だと思いますか?」

  • 養護教諭らに熱意を込めて語りかける高橋さん

    養護教諭らに熱意を込めて語りかける高橋さん=熊谷市江南の江南行政センター

  • 養護教諭らに熱意を込めて語りかける高橋さん

 「サッコ先生」の愛称で知られる、埼玉医科大学(毛呂山町)産婦人科助教の高橋幸子さんが熊谷市江南の江南行政センターで、市内の養護教諭らに講演を行った。高橋さんは性感染症の具体例を示しながら解説。参加した教諭らは「生きた性教育を子どもたちに届けたい」と、気持ちを新たにしていた。

 当日は、同市養護教諭部会の夏季研修会として開催。市内小中学校の養護教諭ら43人が参加した。高橋さんは、自身が編集した「からだとこころの科学 まるっと まなブック」を基に講演。「世界では人権教育のことを性教育と呼んでいる。性教育のゴールは何だと思いますか?」と会場の教諭たちに問いかけ、「子どもたちが18歳になったとき、どんなふうに育ってほしいと思いますか」と続けた。

 次に、性感染症の広がりを実感してもらうための「水の交換ゲーム」を紹介。色付きの水が入ったコップの中身を透明な水のコップに次々と注ぐ内容で、性交為によって感染症がうつる様子を表現している。「子どもたちは、コンドームが“エログッズ”ではなく、『命を守る大切なお守りなんだ』と学ぶ」と高橋さん。会場の教諭らは大きくうなずいていた。

 研修ではまた、医療系学生を中心に全国で活動する学生団体「Vcan(ブイキャン)」から2人が登壇。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの啓発などで17都道府県の学校に出向いた内容を紹介した。「当事者世代(小学校高学年から高校生)がワクチンの情報を知らないことが課題」とし、「年が近いお兄さん、お姉さんが子どもたちに話す授業効果は高い」と呼びかけた。

 世界保健機関(WHO)は2030年までに「子宮頸がんのない世界」を目指しているが、日本はかなり遅れている。山形県南陽市では出張授業後にワクチン接種数が3倍に増え、82・1%まで上がったとして、「私たちを学校に呼んでください」と訴えた。

 養護教諭部会部長で熊谷市立新堀小学校教諭の鯨井貴子さん(47)は、「昨年は性教育のための草案を作り、今年はどうやって生かすかをより具体的に学べた」と話した。オブザーバーとして参加した学校産婦人科医の中山政美さんは、「サッコ先生は、日本の性教育を正しく情熱的に引っ張るジャンヌ・ダルクのような存在」と、たたえた。

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