埼玉新聞

 

娘死亡、生後5カ月…溺死させた妻に懲役3年 健康な娘、夫と3人暮らし 妻の意向に応えた夫、育児休暇を取って子育てを分担…産後ケア、入院を勧めると妻は拒絶 娘を抱いて川に行き転倒、手から離れた幼い命

  • 旧妻沼ゴルフ場のクラブハウス跡地の北側、利根川右岸の河川敷で捜索する警察、消防関係者ら=20日午前10時半ごろ、熊谷市妻沼

    旧妻沼ゴルフ場のクラブハウス跡地の北側、利根川右岸の河川敷で捜索する警察、消防関係者ら=1月20日午前10時半ごろ、熊谷市妻沼

  • 旧妻沼ゴルフ場のクラブハウス跡地の北側、利根川右岸の河川敷で捜索する警察、消防関係者ら=20日午前10時半ごろ、熊谷市妻沼

 生後5カ月の長女を溺死させたとして、殺人の罪に問われた熊谷市の無職秋葉樹里被告(30)の裁判員裁判の判決公判が28日、さいたま地裁で開かれた。江見健一裁判長は「健康で養育にも支障のなかった娘の生命が奪われた結果は誠に重大」として、懲役3年(求刑・懲役4年)の判決を言い渡した。

 江見裁判長は判決理由で、無理心中を考えて生後5カ月の娘を抱きかかえて入水し、後方に転倒したことで娘が手から離れて溺死したことから「自殺目的で川に入り、溺死や水温などの影響により死亡させる危険が生じており、故意性も認められる」と殺人罪を認定。育児や夫との関係にストレスを感じていたことに加え、うつ病と診断され、産後うつ状態となり、軽度の知的障害も影響して、育児の対処能力が低かったとした。

 秋葉被告はこれまでの公判で、夫との関係悪化を改善できずに犯行に至ったと説明。検察側による夫の意見陳述書では、夫は育児休暇など被告の意向に応えつつ、育児の分担をしていたと述べていた。被告は出産後、熊谷市母子健康センターや医師などから産後ケアの利用や入院などを勧められたが拒絶していた。関係が修復できないと捉えたことについて、江見裁判長は「うつ病によって被害的に捉えてしまっていた」と指摘した。

 弁護側は事件後も精神状態が不安定で、入院治療が必要として執行猶予付きの判決を求めていた。江見裁判長は「健康で養育にも支障のなかった娘の生命が奪われた結果は誠に重大。初めての出産で、犯行を思いとどまりにくかったことは理解できる部分もあるが、刑の執行を猶予すべきとまでは言えない」と述べた。

 判決によると、秋葉被告は1月19日、熊谷市内の利根川で、殺意を持って、長女を両手で抱きかかえて入水させ、溺死させて殺害した。県警が保護責任者遺棄の疑いで逮捕し、さいたま地検が殺人罪で起訴した。逮捕後の精神鑑定で、秋葉被告は犯行当時、心神耗弱状態だったと診断された。

 秋葉被告はこれまでの公判と同じ黒のTシャツ姿で出廷。入廷すると一礼し、証言台に座る際も深く頭を下げた。判決が言い渡された際はうつむきながら静かに聞き入り、反応は示さなかった。

■「私の顔を忘れてしまうのが嫌」は身勝手(以下、懲役4年求刑時の記事)

 生後5カ月の長女を溺死させたとして、殺人の罪に問われた、熊谷市の無職の女(30)の裁判員裁判の論告求刑公判が26日、さいたま地裁(江見健一裁判長)で開かれた。検察側は「身勝手な動機」として女に懲役4年を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求めて結審した。判決は28日。

 論告で検察側は、被告が犯行時、思うように育児ができずに抑うつ状態になっていたと説明。無理心中をしようとした動機について「一人で自殺することも考えたが、娘が他人に育てられて私の顔を忘れてしまうのが嫌だった」と供述していることについて、「身勝手な動機で非難に値する」と指摘した。

 弁護側は被告が育児や夫との関係にストレスを感じていることに加え、軽度の知的障害も影響して自殺願望を抱く典型的な周産期うつ病だったと説明。事件後も精神状態が不安定で、入院による治療が必要として執行猶予付きの判決を求めた。

 最終意見陳述で女は「娘に悲痛な思いをさせてしまった。謝っても謝り切れない」と述べた。

 起訴状などによると、女は1月19日、熊谷市内の利根川において、殺意を持って、長女である長女=当時5カ月=を両手で抱きかかえて入水させ、溺死させて殺害したとされる。県警が保護責任者遺棄の疑いで逮捕し、さいたま地検が殺人罪で起訴した。逮捕後の精神鑑定で、女は犯行当時、心神耗弱状態だったと診断された。

■夫は新たな生活を提案、妻「引き離そうとしているのでは」(以下、初公判時の記事)

 生後5カ月の長女を溺死させたとして、殺人の罪に問われた、熊谷市の無職の女(30)の裁判員裁判の初公判が20日、さいたま地裁(江見健一裁判長)で開かれた。女は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述などで、女が長女を出産した直後に不眠症と診断され、昨年10月にはうつ病と診断されたと説明した。同月から市内の実家で両親と生活をしていたが、夫は自身の実家のある福島県での生活を提案。女は「夫が私を入院させ、長女を引き離そうとしているのではないか」と思うようになり、「長女と引き離されるなら一緒に死のうと考えた」ことなどから犯行に及んだとした。

 弁護側は、女が出産前は子どもができて母になる喜びを感じていたものの、育児への不安から不眠症やうつ病を発症したと説明。夫との関係がうまくいかなくなったことなどから、死ぬしかないと思ったことが原因とした。

 女は被告人質問で、「どんな精神状態だとしても絶対に許されない。一番苦しい思いを与えてしまったのは長女で、謝っても謝り切れない」と述べた。

 起訴状などによると、女は今年1月19日、熊谷市内の利根川で、殺意を持って、長女を両手で抱きかかえて入水させ、溺死させて殺害したとされる。

 熊谷署が保護責任者遺棄の疑いで逮捕し、さいたま地検が殺人罪で起訴した。逮捕後の精神鑑定で、女は犯行当時、心神耗弱状態だったと診断された。
 

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