埼玉新聞

 

60%以上が貧困状態 食料支援利用の埼玉県内ひとり親世帯 フードパントリーなどの利用世帯調査

  • ひとり親世帯の生活実態を説明する大山典宏明治大学教授(右)と草場澄江埼玉フードパントリーネットワーク理事長=20日午後、さいたま市浦和区

    ひとり親世帯の生活実態を説明する大山典宏明治大学教授(右)と草場澄江埼玉フードパントリーネットワーク理事長=20日午後、さいたま市浦和区

  • ひとり親世帯の生活実態を説明する大山典宏明治大学教授(右)と草場澄江埼玉フードパントリーネットワーク理事長=20日午後、さいたま市浦和区

 明治大学専門職大学院ガバナンス研究科の大山典宏教授と埼玉フードパントリーネットワーク(SFPN)は20日、県内で食料支援を利用するひとり親世帯の生活実態調査の報告書を公表し、60%以上の家庭が貧困状態にあると発表した。また、現在の暮らしの状況について、苦しいと感じている世帯は約70%に上るなど、ひとり親世帯の経済的に厳しい生活状況が浮き彫りとなった。

 同調査は、SFPNに加入するフードパントリー52団体の利用世帯を対象に実施。2993世帯にアンケートを依頼し、有効回答数は1481世帯だった。県や内閣府が調査した「子供の生活に関する実態調査」など行政調査と比較したものは、全国で初めてという。

 調査によると、SFPNの利用世帯のうち87・1%が母親のみのひとり親世帯で、75・6%の世帯で子どもが1~2人いることから、母子家庭で子どもが1~2人いる世帯がSFPNの標準的な利用者像と想定。64・3%の世帯が貧困状態にあり、世帯全体の年収は200万円未満が48・7%で最多となった。共働き世帯も含めた一般家庭の子育て世帯を対象とした内閣府の調査(2021年)では、年収1千万円以上の世帯が最も多かったことから、共働き世帯とひとり親世帯との間で子育て世帯の経済的な分断が進んでいることがうかがえる。

 過去1年間に食料が買えなかった経験がある世帯は56・1%、過去1年間に公共料金の未払いがある世帯は約14%となり、いずれも一般家庭も含む県調査と比較して約4倍の割合となった。そのほか、調査対象となった離婚経験者のうち65・6%が養育費を受け取っておらず、正規雇用者は全体の27・6%だった。

 結果を受けて、大山教授は「SFPN利用世帯は、経済的困窮、不安定な就労、養育費の不払いなど複合的な課題に直面しており、日々の生活に心理的苦痛を感じる親も多い」と指摘。解決に向けて、経済的支援の強化や雇用環境の整備、公的支援の周知と利用促進などの施策を挙げた。

 また、フードパントリーや子ども食堂など子どもの居場所づくりを進める団体は近年増えているものの、食料を運搬する物流的側面など、裏方業務の負担が増えていると言及。支援を持続可能なものとするため、行政による支援も必要とした。

 大山教授は「厳しい状況にある子どもたちは声を発することができない。大人が事情をくみ取る努力をしなくてはいけない」と話した。

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