埼玉新聞

 

日本初の女性医師にちなみ古里をPR 熊谷の西田園、オリジナル品の「吟子茶」販売 生産する農家が一軒もなくなった“幻の茶豆”もブレンド 工夫重ね開発

  • 「吟子茶」を開発した小林伸光さん(右)と夏帆さん

    「吟子茶」を開発した小林伸光さん(右)と夏帆さん=熊谷市妻沼の「焦がし屋武一」

  • 「吟子茶」の缶入り(中央)と詰め替え用(左)

    「吟子茶」の缶入り(中央)と詰め替え用(左)

  • 「吟子茶」を開発した小林伸光さん(右)と夏帆さん
  • 「吟子茶」の缶入り(中央)と詰め替え用(左)

 旧妻沼町の熊谷市俵瀬で生まれた日本初の女性医師、荻野吟子(1851~1913年)にちなんだ商品で古里をPRしようと、同市妻沼の「茶の西田園」がオリジナル品の「吟子茶」を開発、4月から本格的に販売を始めた。材料には、現在は栽培していない在来茶豆をブレンド。社長の小林伸光さん(54)と長女夏帆さん(26)の父娘が、工夫を重ねて完成させた。

 きっかけは、2019年に公開された映画「一粒の麦 荻野吟子の生涯」だった。地元の歴史的人物に関係する商品を出したいと考えていた伸光さんは、商品を詰める缶の製造を発注。構想はしばらく止まっていたが、今年に入って「そろそろ何かを作ってみたい」と動き始めた。

 茶葉は煎茶ではなく、番茶を使っている。今でこそ、質の劣る茶として主流ではなくなっているが、「吟子が生きた時代もそうだけれど、私が子どもの頃までは庶民に飲まれていた」と伸光さん。静岡県産の番茶を強めに火入れし、香ばしさを表現した。

 この番茶に、在来種の大豆「妻沼茶豆」を焙煎(ばいせん)してブレンド。2年前に収穫され、保管してあった豆だ。濃厚なコクと甘みの強さが特徴だが、生産する農家が一軒もなくなり、幻の茶豆となっている。妻沼茶豆が6割、番茶4割で交ぜた。

 缶を飾る吟子のイラストは、市内に住むブロガーの見栄子さんに依頼した。ラッピングは、パティシエの経験がある夏帆さんが担当。火入れと焙煎の程度、ブレンドの割合は2人で固めていった。祖父の代から店を営む3代目の伸光さんは「お茶離れは深刻で、まちのお茶屋さんは特に苦しんでいる。手間をかけて、コミュニケーションツールになるような商品を作らなければ」と危機感を持つ。

 ティーバッグ5個入り缶が税込み880円、詰め替え用ティーバッグ15個入りが同600円。夏帆さんが店長を務める本店向かいの「焦がし屋武一」で販売し、吟子の業績を調査、顕彰する活動を行う「吟子の会」に売り上げの一部を寄付する。伸光さんは「吟子茶でまちを盛り上げ、吟子がテレビドラマに取り上げられたら」と期待。夏帆さんは「このお茶を通して、たくさんの人が妻沼に興味を持ってほしい」と願っている。

 問い合わせは、焦がし屋武一(電話048・580・3525)へ。

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