埼玉新聞

 

血を流すタクシー運転手、一時心停止に 右目の視界も欠損 金銭要求から20秒足らず…逃げ場ない車内で発砲した男に懲役21年 さいたま地裁「他人の生命を奪うことにちゅうちょない」

  • 【裁判所】さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

    さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

  • 襲われたタクシーの現場周辺では警察官らによる鑑識活動が行われていた=30日午前2時27分、川口市幸町3丁目

    襲われたタクシーの現場周辺では警察官らによる鑑識活動が行われていた=2024年5月30日午前2時27分、川口市幸町3丁目

  • 【裁判所】さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂
  • 襲われたタクシーの現場周辺では警察官らによる鑑識活動が行われていた=30日午前2時27分、川口市幸町3丁目

 川口市で昨年5月、タクシー運転手が拳銃で撃たれて重傷を負った事件で、強盗殺人未遂などの罪に問われた同市の無職の男(69)の裁判員裁判の判決公判が6日、さいたま地裁で開かれた。江見健一裁判長は男に懲役21年(求刑・懲役23年)を言い渡した。

 江見裁判長は判決理由で、逃げ場のない狭い車内で金銭を要求し、20秒足らずで拳銃を発砲していることから「利得のために他人の生命を奪うことに、ちゅうちょはうかがわれない」と指摘。駅に近く、住宅が多数ある場所での犯行に「地域社会に与えた不安は大きい」と述べた。

 弁護側は発砲理由について「脅かして謝罪させようとした」と強盗目的を否定して殺人未遂罪の適用を主張し、懲役12年を求めていた。江見裁判長は車内のドライブレコーダーの映像に謝罪を求める様子が写っていないことや、運転手が「金を出せと言われた」と証言していることから「強盗目的があったことは明らか」と主張を退けた。

 判決によると、男は昨年5月29日午後11時半ごろ、東京都北区のJR赤羽駅付近で男性=当時(72)=が運転するタクシーに乗車。川口市の現場付近へ向かうように指示し、停車中の車内で、用意していた自動式拳銃を突き出し「金を出せ」などと脅迫し殺意を持って発砲し、左横隔膜損傷など約3カ月のけがを負わせ、乗車料金2300円の支払いを免れた上に、男性から現金を奪おうとした。

■心臓や腸の薬、1日に10錠以上飲む男性(以下、初公判時の記事)

 昨年5月、川口市の路上でタクシー運転手の男性が拳銃で撃たれて重傷を負った事件で強盗殺人未遂などの罪に問われた同市の無職の男(69)の裁判員裁判の初公判が2日、さいたま地裁(江見健一裁判長)で開かれた。男は殺意を認めた上で「強盗の目的はない。金を出せと言ったことはありません」と起訴内容を一部否認した。判決は6日に言い渡される。

 冒頭陳述で検察側は、被告には600万円以上の借金があり、携帯電話料金や家賃を滞納しており、拳銃を使って知人に強盗を持ちかけていたと指摘。強盗の目的で殺意を持って拳銃を発砲した犯行態様には「危険で悪質。結果も重大」と述べた。

 弁護側は、男が知人からの投資話に乗ったがお金が返ってこずにいら立ちを覚えていて、当日は運転手の運転の仕方が気になり注意したが、無視されたことにいら立ったと説明。「脅かして謝罪させようと、護身用に持っていた拳銃を発砲した」とし、殺人未遂罪が適用されるべきと主張した。

 証拠調べでは検察側は犯行に使った拳銃について、男が「荒川河川内に投棄した」と供述しているが、発見には至っていないとした。また運転手は手術後、菌血症や致死性不整脈を発症。一時心停止状態になったこともあり、現在右目の視界が欠損していると説明した。

 その運転手も証人として出廷し、「拳銃を見せて、金を出せと言われた」と話した。現在は心臓や腸の薬を1日に10錠以上飲んでおり、右目の治療法は見つかっていないという。「一日でも早くこの状況を忘れたい」と話していた。

 起訴状などによると、男は昨年5月29日午後11時半ごろ、東京都北区のJR赤羽駅付近で男性=当時(72)=が運転するタクシーに乗車。川口市の現場付近へ向かうように指示し停車させると、あらかじめ用意していた自動式拳銃を突き出し「金を出せ」などと脅迫し殺意をもって発砲。男性に約3カ月の左横隔膜損傷などのけがを負わせ、乗車料金2300円の支払いを免れた上に、男性から現金を奪おうとしたとされる。

■タクシー運転手の男性が銃で…コンビニの店員が通報(以下、事件発生時の記事)

 29日午後11時40分ごろ、川口市幸町3丁目付近のコンビニエンスストア店員の40代男性から、「タクシー運転手が出血している。銃で撃たれたと言っている」と110番があった。

 県警によると、同日午後11時38分ごろ、同所の路上で、タクシー運転手の男性(72)=栃木県足利市=が乗客の男に拳銃のようなもので撃たれてけがを負い救急搬送された。命に別状はないという。男は現在も逃走中で、県警は強盗殺人未遂事件として川口署に60人態勢の特別捜査班を設置。男の行方を追っている。

 県警によると、男は同日午後11時半ごろ、JR赤羽駅(東京都北区)付近で男性が運転するタクシーの後部座席に乗車した。3キロメートルほど離れた事件現場付近へ向かうように指示し、停車させると、車内で男性に対して「金を出せ」と脅迫。その後拳銃のようなものを少なくとも1発発砲し、男性に4週間の重傷を負わせた。男性は自力で付近のコンビニエンスストアに駆け込み助けを求めた。搬送当時意識はあり会話ができる状態だったという。ほかの目撃者からは「男がタクシーのドアを殴っている。爆竹のようなパンという音がした」との通報もあった。

 男はその後、駆け足で東方へ向かい県道へ逃走。県警はその先の足取りを追っている。現場から拳銃は見つかっていない。男は50~60代くらいで黒色キャップ、眼鏡着用。黒色半袖、長ズボンに白いマスクを身に着けていたという。

 県警は男性が運転していたタクシーのドライブレコーダーを調べて逃げた男性の行方を追うとともに、現場付近のパトロールの強化や近隣住民に警戒を呼びかけている。

 現場はJR川口駅から北方に約370メートル離れた住宅街で、商業施設も立ち並ぶ地区。

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