埼玉新聞

 

心停止…撃たれた男性、手術後も苦しむ 見えにくくなった目、治療法なく 発砲した無職男、法廷で言葉を選びながら「大変後悔している」 懲役23年を求刑、今も銃は見つからず

  • 男の自宅を捜索した捜査員ら

    男の自宅を捜索した捜査員ら=2024年5月31日午後3時25分ごろ、川口市栄町3丁目

  • 男の自宅を捜索した捜査員ら

 川口市の路上で昨年5月、タクシー運転手の男性が拳銃で撃たれて重傷を負った事件で、強盗殺人未遂などの罪に問われた川口市、無職の男(69)の裁判員裁判の論告求刑公判が5日、さいたま地裁(江見健一裁判長)で開かれた。検察側は「強盗の目的があり、犯行は危険で悪質」として男に懲役23年を求刑。弁護側は懲役12年を求めて結審した。判決は6日。

 論告で検察側は、争点の強盗目的の有無について、男が犯行当日に拳銃を持ち出したことや、運転手が「金を出せと言われた」と証言していることなどから「拳銃を使ったタクシー強盗を考えていた」と指摘。「運転手は手術後に菌血症や致死性不整脈を発症するなど結果は重大で、拳銃を発砲する行為に地域社会への不安は甚大」と述べた。

 弁護側は、発砲した理由について「運転手に無視されたと誤解し、頭にきて発砲した」と説明。タクシー内を写したドライブレコーダーに男が物色する様子が確認できないことなどから、「強盗目的ではない」と殺人未遂罪の適用を主張した。

 男は最後に「被害者にあのようなけがをさせてしまい、大変後悔している。刑務所でしっかり罪を償っていきます」と言葉を選びながら述べた。

 起訴状などによると、男は昨年5月29日深夜、東京都北区の赤羽駅付近で男性運転手=当時(72)=のタクシーに乗車。川口市へ向かうように指示し、市内で停車させると、拳銃を突き出して「金を出せ」などと脅し発砲、男性の左胸などに約3カ月の重傷を負わせたとされる。

■心臓や腸の薬、1日に10錠以上飲む男性(以下、初公判時の記事)

 昨年5月、川口市の路上でタクシー運転手の男性が拳銃で撃たれて重傷を負った事件で強盗殺人未遂などの罪に問われた同市の無職の男(69)の裁判員裁判の初公判が2日、さいたま地裁(江見健一裁判長)で開かれた。男は殺意を認めた上で「強盗の目的はない。金を出せと言ったことはありません」と起訴内容を一部否認した。判決は6日に言い渡される。

 冒頭陳述で検察側は、被告には600万円以上の借金があり、携帯電話料金や家賃を滞納しており、拳銃を使って知人に強盗を持ちかけていたと指摘。強盗の目的で殺意を持って拳銃を発砲した犯行態様には「危険で悪質。結果も重大」と述べた。

 弁護側は、男が知人からの投資話に乗ったがお金が返ってこずにいら立ちを覚えていて、当日は運転手の運転の仕方が気になり注意したが、無視されたことにいら立ったと説明。「脅かして謝罪させようと、護身用に持っていた拳銃を発砲した」とし、殺人未遂罪が適用されるべきと主張した。

 証拠調べでは検察側は犯行に使った拳銃について、男が「荒川河川内に投棄した」と供述しているが、発見には至っていないとした。また運転手は手術後、菌血症や致死性不整脈を発症。一時心停止状態になったこともあり、現在右目の視界が欠損していると説明した。

 その運転手も証人として出廷し、「拳銃を見せて、金を出せと言われた」と話した。現在は心臓や腸の薬を1日に10錠以上飲んでおり、右目の治療法は見つかっていないという。「一日でも早くこの状況を忘れたい」と話していた。

 起訴状などによると、男は昨年5月29日午後11時半ごろ、東京都北区のJR赤羽駅付近で男性=当時(72)=が運転するタクシーに乗車。川口市の現場付近へ向かうように指示し停車させると、あらかじめ用意していた自動式拳銃を突き出し「金を出せ」などと脅迫し殺意をもって発砲。男性に約3カ月の左横隔膜損傷などのけがを負わせ、乗車料金2300円の支払いを免れた上に、男性から現金を奪おうとしたとされる。
 

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