埼玉新聞

 

復旧工事の9割が完了 埼玉・小鹿野の県道土砂崩れ 土砂撤去やのり面工事などを実施 コンクリート吹き付けも終える 現在は外壁のネット施工を進める 今回の土砂崩れの原因は「風化」、顕著な予兆もなく

  • 崩落発生直後に土砂撤去作業を行う県秩父県土整備事務所の関係者=4月22日、小鹿野町両神薄

    崩落発生直後に土砂撤去作業を行う県秩父県土整備事務所の関係者=4月22日、小鹿野町両神薄

  • 崩落したのり面のコンクリート吹き付けを終えた県道両神小鹿野線=5日午前、小鹿野町両神薄

    崩落したのり面のコンクリート吹き付けを終えた県道両神小鹿野線=5日午前、小鹿野町両神薄

  • 崩落発生直後に土砂撤去作業を行う県秩父県土整備事務所の関係者=4月22日、小鹿野町両神薄
  • 崩落したのり面のコンクリート吹き付けを終えた県道両神小鹿野線=5日午前、小鹿野町両神薄

 埼玉県小鹿野町両神薄の県道両神小鹿野線で4月に発生した土砂崩れの復旧工事は、5日現在でおよそ9割が完了した。県秩父県土整備事務所が、土砂撤去やのり面工事などを実施し、5月下旬に崩落部斜面のコンクリート吹き付け作業を終えた。現在は、最終作業となる外壁のネット施工を進めており、完了までは工事用信号機を設置して一方通行規制を行っている。同事務所は「今回のような崩落は今後も各地で起こり得る。山間部の道路を通行する際は慎重な運転を心がけてほしい」と呼びかけている。

■予兆なく突然

 小鹿野町の土砂崩落は、4月22日午前10時ごろに発生。両神山麓花の郷「ダリア園」から約1キロ先、両神山の登山口(日向大谷コース)から約4キロ下った道路の、のり面の土砂が崩れ、14世帯20人が暮らす集落が一時孤立状態になった。

 同事務所はドローンを飛ばして現地調査を実施後、重機で土砂を取り除き、崩落した日の午後8時半ごろに通行止めを解除した。両神山の登山客が多い5月の大型連休期間までは、現地に警備員を配置し、24時間態勢で通行誘導を行った。

 今回は道路脇ののり面(長さ12メートル、幅10メートル)が崩れ、約100立方メートルの土砂が沢になっている谷側へ流れ下った。同事務所によると、崩落は地表にある岩石などが長い間、空気や水にさらされて変質する「風化」が原因。現場ののり面は、山肌にコンクリートを吹き付ける形で施工されているが、地山内部の岩盤が経年変化し、顕著な予兆もなく崩れ落ちた。

■他の地域でも

 現場工事を行った同事務所道路環境担当の石井嘉彦課長(54)は「台風などの災害発生後に、落石や土砂崩落が起こる被害は全国的にも多いが、今回のように天候の影響がない中で、のり面が崩れてしまうケースは珍しい」と説明する。

 同事務所は、秩父地域1市4町に延びる国道・県道の安全点検や落石対策を定期的に実施しているが、新井昌行所長(58)は「岩盤表面のひび割れや落石が見つかった際は事前に対策が打てるが、岩盤内部の風化・劣化過程を確認するのは難しく、今回のような崩落は今後、他の地域でも起こる可能性はある」と、自然相手の道路災害対策の難しさを語る。

 今回の崩落によるけが人や二次災害は確認されていない。新井所長は「道路状況を知らない登山・観光客は特に事故に巻き込まれやすいので、『落石注意』の看板や、落石防止対策が行われている道路に目を配り、常に危機意識を持って通行してほしい」と呼びかけている。

 土砂災害の前兆現象を発見した際の報告は、最寄りの県土整備事務所へ。

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