埼玉新聞

 

長期入院する子どもたちにスタジオ写真を 心臓病の子ども支援する団体とスタジオアリスが病院で撮影会 華やかな衣装でパチリ「すてきな1枚に」 埼玉での実施は初めて

  • 撮影スタッフにあやされて笑顔の男児ら=5月30日午前、日高市

    撮影スタッフにあやされて笑顔の男児ら=5月30日午前、日高市

  • 小児ICUでの撮影に臨む親子

    小児ICUでの撮影に臨む親子

  • 撮影スタッフにあやされて笑顔の男児ら=5月30日午前、日高市
  • 小児ICUでの撮影に臨む親子

 長期入院する子どもと家族にスタジオ写真を体験してもらおうと、日高市の埼玉医科大国際医療センターで5月30日、撮影会が行われた。入院中の0~9歳の子ども12人が華やかな衣装に身を包み、家族と共に写真撮影。医療機器が立ち並ぶ小児集中治療室(ICU)にも、シャッター音と明るい笑い声が響いた。

 撮影会は、心臓移植を必要とする子どもを支援する「あけみちゃん基金」(大阪市)と、写真館「スタジオアリス」(同)が実施。これまでに3病院で計31家族を撮影しており、県内では初めてとなった。院内の会議室に撮影スタジオや衣装約100着を用意。撮影した写真はその場でカードに印刷され、後日フレームに入れて届けられる。

 生まれつき心臓内の壁がなく、心室の一つが小さい心室中隔欠損症の佐藤柑奈ちゃん(1)は、約半年前から小児ICUに入院している。同日はピンク色のドレスを着用した姿を、父親の拓也さん(35)と母親の葉月さん(29)が優しく見つめていた。医師らからも「かわいい」「ピンクが似合うね」と声をかけられ、柑奈ちゃんの主治医も「きれいな衣装を着ている姿を見られてうれしい」と撮影を見守った。

 撮影スタッフが拍手や鈴を鳴らして気を引こうと試みるも、柑奈ちゃんはぐっすり夢の中。医師の提案で半年ぶりの抱っこでの撮影もかない、拓也さんは「重くなっていた。なかなか体重も分からないので、うれしい」と柑奈ちゃんの成長を喜んだ。葉月さんは「かわいい写真を撮ってもらった」と笑顔だった。

 補助人工心臓(VAD)を着けて家族写真を撮影した未就学の男児は、4歳年上の兄に抱き締められて笑顔がはじけた。昨年8月から両親のどちらかが付き添っての入院生活が続いており、父親は「なかなか兄弟が会うこともできないので、笑顔で楽しんでいてよかった」と話す。「ちゃんとした家族写真を撮るのは初めて。すてきな1枚になった」

 発案者の同基金の芋川方洋事務局長は、「生まれてから全く病院を出られず、病衣しか着られていない子もいる」と長期入院の厳しさを語る。「たくさんの中から衣装を選んで、懐かしんで写真を見返すような楽しい体験をしてほしい」と撮影会を企画。「病院や撮影スタッフの方にとっても、自分の仕事に誇りを持っていただける機会になるはず」と語った。

 撮影会は2024年から実施し、国内の移植関連施設、小児重症心不全治療施設計12病院を順に訪問していく予定だ。

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