人材確保、悩む現場 高齢者施設「働き手がより減って、建物があっても運営できなくなる施設が確実に増える」 人口は減るも高齢化率は大きく上昇/さいたま市長選・政令市の課題(3)
さいたま市長選は25日に投開票を迎える。135万人が暮らす政令市の課題を追った。
昨年、さいたま市では高齢者福祉複合施設「グリーンヒルうらわ」(緑区)をはじめ、公設民営のデイサービスセンター4カ所の廃止を決定。グリーンヒルうらわのケアハウス(軽費老人ホーム)「ぎんもくせい」以外は今年3月で廃止となった。
ぎんもくせいは2030年3月まで猶予があり、市高齢福祉課によると、5月1日現在で41人が在籍。引っ越し代など1人当たり約360万円の補償金の支払いが決議された昨年10月以降、市内外の施設などに計22人が転所した。今年3月に市内の介護付きケアハウスに移った80代女性は「政治家がよく口にする少子化対策はとても大切。だけど、高齢者対策もしっかりと進めていかないと日本はつぶれる」と声を大にする。
廃止に至った主な理由について、市は民間事業者の参入が進んだ点を挙げた。こうした傾向に聖学院大学の古谷野亘名誉教授(社会老年学)は「民間が供給できるサービスをいつまでも公が握っている必要はない。公私分担という視点でも時代の流れ」と見解を示す。
一方で、古谷野氏が大きな課題の一つと強調するのが働き手の確保と育成だ。年間を通して、ほぼ満床という市内の介護付き有料老人ホームで施設長を務める30代男性は「10社で1人を取り合うと言われている地域があるぐらい。人員の定着が最大のテーマ」と語る。欠員が出ると1人採用するまでにコストも時間も要するという。
一般的に低賃金とされる介護職。市内外に事業展開する同施設では、介護保険のさまざまな加算を取得したり、資格取得の費用を会社が負担して職員の処遇改善に努めるほか、業務の一部を機械化し、負担を減らすなどの取り組みを実践している。
市の推計によると、25年後の人口は135万4千人から133万9千人に減る一方、高齢化率は23・9%から32・2%に大きく上昇する。男性施設長は「働き手がより減って、建物があっても運営できなくなる施設が確実に増えると思う。人が辞めない会社にすること。次の10年、20年が大切」と見据えた。
古谷野氏は「民営化されても公の役割は大きい。環境整備が大事」と指摘する。市介護保険課によると、市では3年に1度、必要なサービス事業量の見込みを踏まえて施設整備計画を作成。介護に興味を持つ人に対する入門的研修、賃金規定や昇給制度を定める介護職員等処遇改善加算の取得に向けた社会保険労務士の無料派遣を昨年から始めた。
市は昨年に2度、介護人材確保に向けた要望書を国に提出。介護保険課は特に要介護・要支援者が増加する中、ケアマネジャーが減少している点を懸念する。ケアマネジャーの人材育成など効果的な対策が求められている。










