埼玉新聞

 

「後継者育て、守っていきたい」 66年前の植樹祭会場、埼玉・寄居の金尾山 ヤマツツジの群生地、保存会を結成し保護 寄居町観光協会金尾支部長、稲山良文さん/全国植樹祭 森の守りびと(5)

  • ヤマツツジが咲き誇る金尾山で保存活動に取り組む稲山良文さん=4月21日、寄居町金尾

    ヤマツツジが咲き誇る金尾山で保存活動に取り組む稲山良文さん=4月21日、寄居町金尾

  • ヤマツツジが咲き誇る金尾山で保存活動に取り組む稲山良文さん=4月21日、寄居町金尾

 埼玉県秩父市と小鹿野町にある秩父ミューズパークを主会場に25日に開かれる「第75回全国植樹祭」。66年ぶりの県内開催を前に、県内で森林の保全や育成に取り組む人々を紹介する。

■ツツジの山を次世代に

 「今が見頃で、一番いい時期ですよ」。4月下旬、埼玉県寄居町金尾の金尾山でヤマツツジが見頃を迎え、町観光協会金尾支部の支部長を務める稲山良文さん(77)が次々と訪れる観光客に丁寧に対応していた。「今年も多くの人たちが来てくれて、本当に良かった」と笑顔を見せた。

 25日に秩父市と小鹿野町にまたがる秩父ミューズパークで行われる「第75回全国植樹祭」は、県内では1959年4月に寄居町の金尾山で開催された第10回大会以来で66年ぶり。当時の植樹行事では昭和天皇、香淳皇后がヒノキの苗木をお手植えになり、県内外からの参加者約7千人が約1万5千本のヒノキの苗木を植樹した。約50センチだったヒノキの苗木は現在、高さ約18メートルにまで成長したという。

 稲山さんは同町出身で、小学生の時に当時の植樹祭も参加。高校卒業後、鉄道会社に勤務し、2003年から町議を務める。「叔父がツツジの保存活動に熱心だったから」と、40代の時から活動に携わるようになった。13年11月に金尾山で開催された「第37回全国育樹祭」には町議会議長として参加した。

 金尾山はヤマツツジの群生地として知られる。自生地は約2・7ヘクタールで約5千株が植えられていて、中には樹齢が200年を超えるものもある。植樹祭開催後、地元につつじ山保存会(現寄居町観光協会金尾支部)が結成され、下草刈りや歩道整備など積極的なボランティアによって植えられた木を大切に保護してきた。

 花は山頂付近から咲き始め、徐々に麓まで咲き誇る。4月中旬から5月上旬の最盛期には山が花の色で真っ赤に染まり、秩父方面に向かう観光客が見かけて立ち寄る場合も多い。山頂からの展望も抜群で、毎年大勢の観光客を楽しませる。一方で、山間部である金尾地区は少子高齢化が進んでおり、下草刈りやツツジの手入れを行うのは10人ほど。携わっている人も大半が70代以上で、後継者不足が課題だ。

 今年3月上旬には、第75回全国植樹祭実行委員会と県の主催で植樹祭機運醸成のため、植樹イベント(どこでも植樹祭)が金尾山で開催された。同町の峯岸克明町長や稲山さんら関係者が記念植樹を行った後、地元の子どもたちを含めた地域住民らもヤマツツジを約40本植樹した。クイズ大会も行われたほか、県産木材の玩具「ガチャガチャ」も回され、にぎわいを見せた。

 66年ぶりに今回の植樹祭にも参加する稲山さんは「金尾山にツツジがあるのはこれを守ってきた先人たちのおかげ。次世代の後継者たちを育てていき、金尾山を守っていきたい」と話した。

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