蔦重が出版の教科書も さいたま浦和区の県立文書館で企画展 江戸の本屋の資料43点 大河ドラマ『べらぼう』に登場する人たちの顔を思い浮かべながら「江戸の文化を知る切っかけに」
江戸の出版文化をテーマにした企画展「本をめぐる文化」が、さいたま市浦和区の県立文書館で4月27日まで開かれている。蔦屋重三郎など、NHK大河ドラマ「べらぼう」にも登場する本屋が出版した本も展示。江戸で花開いた多様な出版文化を紹介している。
江戸時代中期になると、寺子屋の普及などで庶民の識字率が上がり、江戸を中心に商業出版が盛んになった。儒学者の寺門静軒が1834(天保5)年に著した「江戸繁盛記」によると、江戸で本の出版や販売などを行った書肆(しょし 本屋)は、老舗が50軒、のれん分けした系列店は100~千軒もあったという。
企画展では、同館の収蔵資料から、蔦屋重三郎(蔦重)や鱗形屋孫兵衛、鶴屋喜右衛門など、「べらぼう」でもおなじみの書肆の本など43点を展示。蔦重が出版した「小野篁歌字盡(おののたかむらうたじつくし)」は、遊び歌や挿絵も交えた手習いの教科書。吉原遊郭のガイド本「吉原細見五葉松」は、2代目の蔦重の時代のもの。
そのほか、小謡を集めた本や小説、武蔵国の名所案内、武家の名や石高を記した名鑑、遊郭での男女を描いた錦絵など、学問から娯楽まで幅広い分野の出版物を展示。これらの資料は県内の旧家に残されていたもので、江戸近郊でも書物に親しんでいたことが分かる。
また、県内の書店関係の資料として、須原屋書店(さいたま市浦和区)が大正時代に出版した理科の筆記帳も。須原屋は、76(明治9)年に浅草の須原屋伊八の貸店舗として創業したという。
同館学芸員の木暮咲樹さんは「江戸時代には出版文化が成熟し、今につながっているものもあると思う。『べらぼう』に登場する人たちの顔を思い浮かべながら、江戸の文化を知ってもらう切っかけにしてほしい」と話していた。
問い合わせは、同館(電話048・865・0112)へ。










