埼玉新聞

 

「自首してください」犯人へ手紙も 時効まで5年を切る…熊谷小4死亡ひき逃げ 母親が警察官へ講演 最愛の息子との思い出を語る

  • 警察官を対象の講演で、ひき逃げ事件の真相解明を訴えた小関代里子さん=10日午後、さいたま市北区の県警察学校

    警察官を対象の講演で、ひき逃げ事件の真相解明を訴えた小関代里子さん=10日午後、さいたま市北区の県警察学校

  • 警察官を対象の講演で、ひき逃げ事件の真相解明を訴えた小関代里子さん=10日午後、さいたま市北区の県警察学校

 熊谷市で2009年9月、ひき逃げ事故で死亡した小学4年小関孝徳さん=当時(10)=の母親の代里子さんが10日、県警警察学校(さいたま市北区)で、警察官を対象に講演した。事件から15年以上が経過し、代里子さんは「時効まであと5年を切った。時間がない。一日も早く逮捕してほしい」と強く訴えた。

 孝徳さんは09年9月30日、熊谷市本石の路上で、自転車で塾から帰宅途中、車にひき逃げされ死亡した。22年に行われた捜査検証で事故には車2台が関係していたことが新たに判明したが、事件は未解決のままとなっている。

 代里子さんは孝徳さんの写真を持って登壇。各署から集まった警察官190人に対して、孝徳さんが好きだったサッカーや10歳の誕生日にプレゼントした腕時計など、最愛の息子との思い出を言葉を詰まらせながら語った。

 事件の公訴時効は、道交法の救護措置義務違反(ひき逃げ)が7年、自動車運転処罰法の危険運転致死罪は20年で、これでは短いと指摘。県警は危険運転致死に切り替えて捜査を続けている。

 代里子さんは殺人罪の時効が撤廃されていることに触れ、「凶器が刃物から車という鉄の塊に変わったというだけで、車だから死んでも仕方ない、逃げてしまえば分からないというのはおかしい」と訴えた。

 孝徳さんは事故当時、プレゼントされた腕時計を身に着けており、身元特定の証拠品となった。しかし、事故発生から10年を前にして県警は腕時計を紛失。紛失が発覚することを免れるために、捜査書類などをシュレッダーで破棄し、元警部補が公文書毀棄(きき)罪に問われたことにも触れた。腕時計は見つかっておらず、代里子さんは「息子の腕時計を捜してください。お願いします」と語った。

 講演の最後には「2台の犯人へ」と題し、手紙を読み上げた。「息子の命を奪って今何をしていますか。目の前に大切な家族はいますか。あの日何があったのか真実を知りたい。家族に付き添ってもらって自首してください」

 講演を聞いた男性警部補(50)は「貴重な話で、生前の孝徳君の性格や生活状況が目に浮かんだ。この事件を広く周知させて犯人検挙を目指したいと思った」とコメントした。

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