WEB埼玉

2006年7月30日(日)

 

浦和学院、大一番で底力
夢舞台へ導く先制2ラン
高校野球埼玉大会

 

浦和学院 4―0 鷲宮

 一回に鮫島の2ランで2点を先制した浦和学院が赤坂の好投で快勝した。

 浦和学院は一回一死二塁から鮫島が右翼席に2点本塁打を放ち波に乗ると、六回に二死二塁から堀越の中前打で1点、八回は二死二塁からまたも堀越の左前打で4点目を奪った。鮫島、堀越が打ったのはいずれも真ん中の甘い球。鷲宮のエース増渕竜の失投を逃さず打ち好投手を攻略した。

 守っては二回途中から先発坂上をリリーフした赤坂が、計7回を内野安打1本に抑える好投。二、三回のピンチにも左打者の胸元に落ちるスライダーで三振を奪い、切り抜けた。

 鷲宮は一回の好機を逸したのがすべて。無死二塁から犠打を失敗し併殺。さらに二死二、三塁にするも得点できなかった。増渕竜は本来の投球ではなかった。二回以降は走者を背負いながら粘り強く投げていたが、六、八回につかまった。

剛腕砕いた無心の一振り

鷲宮―浦和学院 1回裏浦和学院1死二塁、鮫島が右翼席に決勝2ランを放つ。打球を見上げる増渕竜―赤荻バッテリー

 度肝を抜いた。2万人の観客がどよめいた。浦和学院の鮫島が一回、いきなり2ランを放った。増渕竜の出はなをくじく先制パンチ。2年生の公式戦初本塁打が、チームを甲子園に連れていく決勝2ランになった。

 鷲宮とは秋も春も対戦していない。増渕竜の球を見るのは初めて。前評判も球の速さも意識しない。「気迫で負けない。けんかする気で打席に入った」

 一回一死二塁、カウント1―1から真ん中高めの直球が来た。「甘い球だったので迷わずたたいた。打った瞬間に入ったと思った」

 相手はあの増渕竜。甘い球はそうそうこない。初対決の最初の打席で、最初の失投を逃さず振り抜いた。

 野球部の寮ではこの日好投した赤坂と相部屋。「どんな投手なのかな。楽しみだな」。2人で話しているうちに、いつの間にか寝てしまった。

 「好投手だからこそ打席を楽しんだ。緊張感を楽しんだ」。気負いがないのも下級生か。

 だが、その実績は上級生をはるかにしのぐ頼れる2年生。今大会は決勝を含め7試合すべてに先発しチーム一の8打点を挙げた。打率は実に5割5分6厘。こちらもチーム一だ。

 「甲子園は強いチームばかり。全力で熱い野球をやりたい」

 全国の舞台で、今度はどんな投手と対戦できるのか。気負いはない。打席を、緊張感を心から楽しむつもりだ。

 

 勝利の瞬間、マウンドで両こぶしを天に突き上げ、叫んだ。「ヨッシャー」。喜ぶナインの輪の真ん中には、頼もしい2年生エースの姿があった。決勝の大舞台で、頼れる「背番号18」が最高の輝きを放った。

最後の打者を二ゴロに打ち取り、ガッツポーズする浦和学院の赤坂

 先発は先輩の坂上に譲ったが「気持ちでは自分が先発のつもりで集中していた」。二回二死一、二塁の場面で、右翼手からマウンドに上り、当たっている1番安田を空振りの三振。三回、再び右翼手に戻ったが、一死二塁のピンチになると、また定位置に呼び戻され、鷲宮の4、5番を連続三振に切って取った。まさに「ここぞの時の赤坂」だ。

 直球で内角を突き、縦と横に変化する2種類のスライダーで勝負する。6奪三振で二塁を踏ませたのは1度だけ。四回以降は鷲宮打線を内野安打1本に抑えた。辛口の森監督を「まさか無失点とは」と喜ばせる快投だった。

 打撃センスを買われ、1年生のうちから投手兼外野手としてベンチ入り。だが試練は突然やってきた。5月の練習中に痛めた右ひざの切り傷からばい菌が入り、1カ月ほど微熱が続いた。医者の診断は「最悪の場合、足の切断もある」。どん底の中、病院探しや通院の付き添い、「早く治せよ」という励ましの声など、監督と仲間の優しさだけが支えだった。

 病気が完治し、練習を再開したのは6月中旬。背番号18が示すようにぎりぎりでベンチ入りした。しかし、4回戦で初登板すると、準々決勝は2失点、準決勝は無失点と徐々に調子を上げていき、最高の舞台で最高のピッチング。「もう一度マウンドに立てたのはみんなのおかげ。本当に幸せ」と、野球ができる喜びをかみしめている。

 試合後の整列で、鷲宮の増渕竜から野球ボール型のお守りを託された。「増渕さんはすごい投手。甲子園では埼玉の代表として、恥ずかしくない投球をしたい」。挫折と躍進、そして感謝の心。この夏、大きく成長した2年生エースが夢舞台へ羽ばたく。

接戦にもまれ成長

 最後に勝ったのはチャレンジャー精神で挑んだ浦和学院。伝統の強打で鷲宮の剛腕、増渕竜を打ち崩し、2年ぶりに王座を奪還した。

鷲宮―浦和学院 1回裏浦和学院1死二塁、決勝2ランを放った鮫島(右)が一塁を回りこん身のガッツポーズ

 森監督は「もたついた大会だったし、今まで勝てるイメージがなかったが、挑戦者の気持ちを忘れずに戦ったことが勝因。大会で成長した選手たちに感謝したい」とたたえた。

 一回がポイントだった。表のピンチを切り抜けた後、3番鮫島が会心の2ラン。本塁打の強烈なインパクトで、一気に流れを引き込む。投げては2年生赤坂を中心に巧みな継投で無失点。「投手不足」を嘆いていた指揮官の不安を吹き飛ばす快勝だった。

 今大会は苦しい試合が続いた。7試合中、コールド勝ちはわずか1度。1点差の試合を3度経験。初戦の和光戦は3―2で逆転勝ち。準々決勝の花咲徳栄戦は6点リードの試合が一転、1点差まで詰め寄られた。それでも勝った。接戦を重ねるたびにチームはたくましく成長した。

 今季は昨秋の県大会で優勝したが、続く秋の関東大会では1回戦で敗退。当時の1年生エースが転校し、春季県大会は3回戦で敗退した。投手陣の再建とナインの意識改革が進まないまま、迎えた今大会。必要だったのは「王者」から「挑戦者」への気持ちの切り替えだった。

 「このチームは不器用。だが、不器用なやつらは逆に、一度何かをつかめば離さない」(森監督)というように、ナインはこれまでの接戦の中で「大きな何か」をつかんでいた。だから、決勝の大舞台、2万人の大観衆の中でも硬くなることなく、一人一人が伸び伸びと持ち味を出し切った。

 これまで力がありながら、それを出す術(すべ)を身に付けていなかった。主将の内田は「苦しい練習に耐えてきたから平常心で戦えた。難しい試合ばかりだったけど、この試合で(好投手を)打てて自信になった」と、一皮むけたチームに胸を張った。

 ようやく自分たちを表現できるまでに成長したナイン。次は夢の甲子園だ。「一つでも多く戦うために、人事を尽くしたい」と森監督。本当の真価が問われるのはこれからだ。

 
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