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鷲宮 3―2 春日部共栄
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| 鷲宮―春日部共栄 9回裏鷲宮2死満塁、川村が中前にサヨナラタイムリーを放つ。捕手金子=県営大宮 |
鷲宮が九回二死満塁から川村の中前打でサヨナラ勝ちした。
九回、先頭の代打大塚が右前打で出塁。二つの四死球などで二死満塁の好機を築いた。ここで、4番川村が中前に適時打を放ち、決勝点を挙げた。増渕竜は150球を超す投球で5安打6奪三振。2点を失ったが、後半は直球がさえ連打を許さなかった。
春日部共栄は六回二死二塁から、松崎の右中間三塁打で同点に追い付いたが、九回二死一、二塁の勝ち越し機で一本が出ず、粘り強く投げる大竹を援護できなかった。
気迫の粘投 「次も全力」
○鷲宮 エース増渕竜が5安打2失点と粘り強い投球を見せた。四回には今大会初失点を喫したものの、「絶対勝つ気持ちだけで投げた。調子は良くなかったが、心の部分で粘れた」と勝利をかみしめた。
六回まではボールに切れを欠いた。要所を抑えながらも、各打者に粘られ苦しんだ。だが、勝負どころでは投球が一変。七、八回は本来の躍動感が戻った。「自分がどうにか抑えていれば、打線が絶対打ってくれる」とチームメートを信じて最後まで投げ切った。
5回戦では無安打無失点を達成し、この日は優勝候補をなぎ倒した。「勝ってもうぬぼれてはいけないし、負けたら意味がない。次も全力でいく」と気を引き締め直していた。
流れ戻したエースの変化
真夏の日差しが戻った県営大宮球場。優勝候補同士の真っ向勝負は、七回に流れが変わった。いや、鷲宮の大黒柱、エース増渕竜が自ら流れを変え、甲子園マジックを「2」とした。
2点を先制した鷲宮だったが、六回に同点に追い付かれちょっと嫌なムード。なのにその裏、ファウルかフェアかをめぐって試合が中断した。鷲宮側のファウルの主張は認められず、「嫌な雰囲気がベンチに流れた」と高野監督。
勝負に流れはつきもの。それを感じ取り、引き戻したり、乗ったりできるかが勝負のあや。増渕竜もまた敏感に感じ取っていた。
前日の無安打無得点試合とうって変わって、この日の増渕竜はピリリとしなかった。ボールが多く、六回を投げ終えて127球という球数の多さ。タイムリーを含む3長打。増渕竜らしからぬ投球内容だった。
ところが七回、別人の増渕竜がマウンドに現れる。「意識して変えました。自分が流れを変えようと思った。自分で抑えて変えようとした」。投球間隔を意識的に速めポンポン投げ出す。それがリズムを生み、ボールがコーナーに決まりだす。まるで前日の増渕竜が七回からリリーフしたようだった。 七、八回はわずか18球で3者凡退。流れが変わった。
監督もナインもエースの変化を敏感に察知。九回を終えての増渕竜は150球を超えていた。「延長はまずい」。迎えた九回裏、先頭の代打大塚が右前打で出塁。「あそこが勝負。あそこを逃していたらどうなっていたことか…」と高野監督。流れに乗った。
果敢な代打攻勢に出て二死満塁。「増渕の投球が七回から上がっていたので、1点勝負と思っていた。みんなが自分に懸けていると感じた」と川村。主将で4番のサヨナラ中前打はこうして生まれた。
最高の勝ち方で第1関門を乗り切った鷲宮。次は聖望学園。そしてその次は…。私立3強を倒したその先に、県立の星、おらが町の野球部の栄冠が待っている。
すべて懸けた キャプテン、夢の一打
野球少年なら一度は夢に見る。九回裏二死満塁。一打サヨナラの打席。
主将で4番の川村は、これまでの4試合で18打数4安打。この試合も4打数無安打と当たっていなかった。迎えた5打席目が「夢」の場面だった。
エース増渕竜の投球数は炎天下の下、150球を超えていた。厚い選手層を誇る春日部共栄相手に延長戦は不利。分かり切った結論だ。
「チーム一の努力家。あの子なら決めてくれる」と高野監督。「努力はきっと報われる。川村が決めてくれる」とネクストバッターズサークルで増渕竜。そしてバッターボックスでは川村が「決めてやる」。みんなの思いと強い気持ちがバットにこもる。
カウント2―2からファウルで粘った6球目だった。走者を3人背負っていては、死球、捕逸、暴投、ボーク、一球が命取り。さすがの春日部共栄エース大竹も平常心とはいかない。真ん中高めの直球。明らかな失投だった。
カキーン。金属バットの小気味いい音が試合終了の合図。一塁ベースへ駆け込んだ川村は無意識のうちに両手で握り拳を作っていた。「自分のすべてを懸けた打席で、すべてを出せた」。努力家らしい、キャプテンらしい、4番らしい、そんなサヨナラ中前打だった。
打てない投手じゃなかった
●春日部共栄 あの増渕竜を完全に打ち崩した。六回二死二塁から、決め球のシンカーをすくい上げ、右中間に同点三塁打を放った松崎。「練習で速い球を打っていたので、春季大会より球が見えていた。決して打てない投手じゃなかった」と言う。
連覇の夢を断たれ、ベンチ裏に引き揚げてきても泣きじゃくる選手たち。その中でじっと前を見据え、堂々と質問に答える。「全力で戦った結果。相手の力が上なのだから仕方ない」
「全力疾走と何事にも一生懸命なのが共栄野球。ぼくたち3年生はそれができていた。後輩たちも伝統を受け継ぎ、必ず甲子園に行ってほしい」としっかり語った。
驚異の粘りも力負け 連覇ならず
サヨナラ負けの瞬間、エース大竹がマウンドで崩れ落ちた。連覇の夢を断たれた春日部共栄。立ち上がっては倒れ、立ち上がっては倒れ、何度もひざを付く大竹。「気持ちは絶対負けていなかった。でも。相手の力が上でした」
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| 鷲宮―春日部共栄 仲間に支えられてマウンドを降りる春日部共栄のエース大竹(右から2人目)=県営大宮 |
序盤は悪い流れだった。一回に失策から1点を許すと、二回には暴投から2点目を失う。やってはいけない形で先制される最悪のパターン。普通のチームなら一気に大差をつけられてもおかしくない。
だが、ここから踏ん張るのが春日部共栄。大竹は二回無死満塁のピンチを1失点で切り抜けると、三回から八回まで無失点の好投。打線も四回に斉藤の犠飛で1点を返し、六回に松崎の三塁打で同点に追い付く。
本多監督は増渕対策として、外角直球を逆らわずミートすることを指示。各打者は忠実に実行し、5回戦まで無失点を続けてきた増渕竜から、今大会初めて得点を挙げた。
昨夏の決勝、九回二死から4点を奪って逆転勝ちした驚異の粘りは健在。流れはきている、あとは勝ち越せばいいだけだ。
だが、1点が取れない。九回も二死から敵失と大竹の中前打で一、二塁の好機を築くが無得点。「走者を置いて1本が出なかった。相手投手の球威に負けた。力負けです」と本多監督。
「全国でも上位を狙えるチーム。だからこそ甲子園に連れていきたかった。残念だ」
1987年の浦和学院以来、19年ぶりの連覇を狙った春日部共栄。その前に立ちふさがった増渕竜という壁。それは巨大だった。
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