WEB埼玉

2006年7月24日(月)

 

小さなエース 大きな仕事
市川越4-0埼玉栄
全国高校野球埼玉大会

 
埼玉栄を4安打完封した長谷部優司投手
(市川越3年)

 

市川越─埼玉栄 優勝候補の埼玉栄を4安打完封し、雄たけびを上げて喜ぶ市川越の左腕エース長谷部=県営大宮

 あの木村に投げ勝った。身長166センチの小さなエースが、でっかい仕事を成し遂げた。勝利の瞬間、淡々とした表情から一転、両手を突き上げてガッツポーズ。「埼玉栄を絶対に倒したかった」

 三度目の正直だった。秋季大会はコールド負けし、春季大会も0―5で敗れた相手。組み合わせが決まった直後から、埼玉栄との対戦を予想して練習。しかも県営大宮のマウンドをイメージして。

 「春に学んだのは、同じ球が続くと打たれるということ。一球一球、相手の目先を変えた」。左腕から直球にカーブ、スライダー、チェンジアップを織り交ぜ翻弄(ほんろう)。

 3回戦に続く連投。疲れがあるかと思いきや、逆にこれが吉と出た。力んで四球の走者を出し、自ら崩れるのが悪い癖。新井監督が「連投で力みが取れた」というように、この日の四球は九回の一つだけ。

 淡々と、あくまで淡々と。低めに、内外角へ、球を散らし続けた。「力は相手が上。あくまで挑戦者の気持ちで我慢した」。抑えていた気持ちが爆発したのか、スタンドに勝利の報告に向かう途中で思わず涙が。

 試合後、雄たけびを挙げるナインに「はしゃぐな、こら。目標は栄に勝つことじゃないぞ」と新井監督。「ここまで来たら甲子園を目指します」ときっぱり言った。東松山南中出身。

まさかの4回戦敗退に肩を落とす埼玉栄のエース木村

遠い夢 「剛腕」散る

 最後の打者が三ゴロに倒れると、Cシード埼玉栄の早過ぎる夏が終わった。主将として先頭で整列した木村は、あいさつが終わってベンチに戻ると、ダッグアウトの中で一人泣き崩れた。

 昨秋はコールド勝ち。今春も快勝した相手だった。六回、失策で許した走者をスクイズを含む二つの犠打と2本の安打でかえされる。ボールにはいつもの切れがない。八回も3本の長短打などで2点を奪われた。「ブルペンでボールが走っていたのに、なぜ打たれたか分からない」と肩を落とす。

 今春の市川越戦で、でん部を痛めた。戸栗監督は「けがで十分な走り込みや投げ込みができなかった。木村一人に頼り過ぎてかわいそうなことをした」と話す。内野陣が5失策。球威が落ちても力投するエースの足を引っ張った。打線も4安打に抑え込まれた。

 甲子園は近くて遠い存在。昨夏は3点リードで迎えた九回二死から逆転負けした。「簡単に行けるようなレベルのものではなかった。受け身に回ったことは一度もないし、挑戦者の気持ちで思い切りやったので悔いはない」と何とか上を向く。

 注目の右腕に球運は最後まで訪れなかった。だが、「昨年、今年と1、2年は多くの経験をしている。甲子園に絶対行ってもらいたい」と夢を託す。大黒柱の無念を後に続く選手たちが晴らすしかない。

 
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