木村文和(埼玉栄)
 |
増渕竜義(鷲宮)
 |
第88回全国高校野球選手権埼玉大会は12日に開幕。今大会は例年にない好投手豊作の年だ。その中でもひときわ注目を集めているのが、鷲宮の増渕竜義と埼玉栄の木村文和。埼玉にとどまらず全国屈指の呼び声高い両右腕が、甲子園行きのたった1枚の切符を懸けて激突する。ともに勝ち進めば決勝で対決。「真のエース」はどっちだ。
過去に2人は2度対戦し、木村が連勝している。1度目は昨夏の準々決勝で、埼玉栄打線が増渕を序盤に攻略し快勝した。
2度目は続く秋季県大会。これも準々決勝での対戦だった。新チームの大黒柱となった2人は、140キロ台の速球をこれでもかと投げ合い、息もつかせぬ投手戦を繰り広げた。結果は埼玉栄が1―0で九回サヨナラ勝ち。増渕はそれまで続けていた無失点記録が43回で途切れた。
「木村君を意識していないと言ったらウソになりますね」。増渕は木村を強く意識している。
「去年の夏に対戦した時は、圧倒的な力の差を感じました」と素直に認めた。素直に認めるところが増渕らしい。「次は負けない。それが僕のモチベーションになりましたから」
秋の対戦は自分の成長を木村に見せるチャンスだった。9回1失点、被安打5の8奪三振。敗れはしたが、当時のコメントは「力は出し切った」とさばさばしたもの。だが内心は違った。「負けは負け。負けはコールド負けと一緒なんです。どんなに惜しい試合をしても勝たなきゃ意味がない」
夏に比べたら内容は格段に良くなった。それでも「力の差は少しは縮まったと思う。でも縮まっても、抜かさないと勝てない」。表情は柔らかいが、口調は次第に強くなっていった。
鷲宮の高野監督は「竜義は自分より木村君の方が上だと思っている。同級の木村君に負けないように頑張ってきた部分は確かにある。竜義にとって木村君という存在は大きい」と話す。
木村という目標が成長の糧となった。そして、その証しを示したい。「木村君はいい投手。でも次は絶対に負けない」。3年間の総決算は木村越えだ。野球ボール 野球ボール 野球ボール
「増渕君を意識してる? まったくないです」。木村はそうきっぱり言い放った。
全身からほとばしるオーラ。会話した瞬間に伝わってくる勝ち気な性格。優しい雰囲気を醸し出していた増渕とは正反対だ。「いいピッチャーだと思ったら、その時点でそのピッチャーに負けている。それでは甲子園には行けない」
しかし、そんな強気な言葉とは裏腹に、昨秋の対決で見せた快投は、明らかに増渕を意識した投球だった。九回3安打完封。奪った三振は11個。二回から八回までは1人の走者も出さなかった。完ぺきとも言える内容は、相手が増渕であったからこそ。
「増渕君も絶好調だったし、絶対に点をやらないつもりで投げた。あの試合は絶対に負けたくなかった。点をやりたくなかった。増渕君に勝ちたかった」
増渕も自分の性格を負けず嫌いと話したが、木村はもっと強烈だ。話を聞けば、聞くほど実は木村も増渕を意識していることが分かってくる。だが、それを周囲に見せたくない。これが木村のパーソナリティーだ。「個人的には意識しないようにしている」。最後に口にしたこの言葉が本音だろう。
6月20日の組み合わせ抽選会で2人は言葉を交わした。
「決勝で会おう」
それは会話というより約束だった。
|