この夏 注目の8人

仲間や監督に恩返し

富士見 樋口裕史投手

 

最速142キロの直球を武器に最後の夏に懸ける樋口裕史

 「すべてを出し切りたい」。一度は野球をあきらめた左腕が、最後の夏に思いのたけをぶつける。

 樋口の名を広めるきっかけとなったのは、春季地区大会代表決定戦の城西大川越戦。「制球もまずまずで、気持ち良く投げられた」と淡々と振り返ったマウンドで、スライダーとシュートを決め球に、最速142キロの直球を絡め、実に19個の三振を奪った。

 だが、ここまでの道のりは平たんではなかった。佐野日大(栃木)に入学したものの、チームになじめず1年生の7月に退部。山崎警監督に声を掛けられ、富士見に転校し、「今度は最後までやり遂げたい」と再スタートを切った。

 昨夏から公式戦に登板するが、目立った結果を残せなかった。そこで冬場は「走ってこいというと、1時間でも2時間でも走り続けている」と山崎監督が笑うほど、精力的に走り込んだ。成果として体はひと回り大きくなると同時に、3月の練習試合でいきなり142キロをマーク。平均球速も昨秋から約10キロアップの135キロに上昇した。

 半面、新たな課題も生まれた。三振を取れるだけに、「2ストライクに追い込むと仕留めたい欲が出る」と、強引に投げ急ぐことが増えた。春季県大会2回戦では所沢商相手に7失点しコールド負けを喫してしまう。その反省を踏まえ、直球や変化球を織り交ぜる緩急を体に染み込ませた。

 ようやく勝負できる態勢が整い、迎えた最後の夏。「転校してきた僕を受け入れてくれた仲間や監督に恩返しするピッチングをしたい」。感謝の思いは自らの投球で示すつもりだ。

(2006年7月5日付掲載)

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