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二回に先制してリズムをつかんだ埼玉栄が浦和学院を押し切った。
埼玉栄は二回、一死二塁から谷口の中前打で1点を先制。さらに二死一、二塁から1番高橋の右越え本塁打で3点を加えて主導権を握った。エース木村は8安打を浴びたが、スライダーを要所で決めて浦和学院の流れを断ち切った。バックも無失策でもり立てた。
浦和学院は先発井上が安定せず、打線も勝負どころで一本が出なかった。1点を返しなおも一死一、三塁の好機に追加点が奪えず、五回の3連打も外野の好連係に得点を阻まれた。
決勝3ラン 「勝ったぞ」
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| 浦和学院−埼玉栄 2回表埼玉栄2死一、二塁、高橋が右越え決勝3ランを放つ。捕手今成 |
勝利の瞬間、右手を高々と挙げ、センターから走ってきた埼玉栄の高橋。公式戦2本目の本塁打が浦和学院を倒す決勝3ラン。「うれしくて、うれしくて。あのウラガクに勝ったぞって」
1点先制した後の二回二死一、二塁。カウントは0―2だ。「必ずストライクを取りにくる」。狙っていた直球が内角高めにきた。思い切って振った打球は右翼席に飛びこんだ。
これまで好機に結果を出せずに苦しんできた。考え過ぎて振りが委縮していたからだ。「ウラガクには絶対に負けたくない、と気持ちを前に出すことができた。強い相手だから思い切りいけた」
既に1年の秋にはレギュラーを獲得したが、その後は故障が相次ぎ、夏にベンチ入りするのは今大会が初めて。所沢商に敗れた昨年の準決勝もスタンドで見ていた。「なぜ、グラウンドに立てないのか。歯がゆくて仕方なかった」。最初で最後の大会に懸ける思いは人一倍強い。
1番打者だがパンチ力はチーム一。ムードメーカーの半面、ちょっと浮かれる性格も。「本塁打なんて打つと調子に乗ってしまう。もう一度、気を引き締めます」。その目は決勝の舞台をしっかり見据えていた。
1球に執着した勝利
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| 浦和学院−埼玉栄 5回裏浦和学院2死一、二塁、渡部の右前打で二塁走者掘越が本塁を突くがタッチアウト。捕手山本 |
ゲームセット。熱戦を制した選手たちの顔が歓喜に包まれた。埼玉栄ナインが右手を突き上げた。
秋季県大会決勝の再現。雌雄を決する一戦を制したのは、この試合の1イニング、一球にこだわり続けた埼玉栄だった。真っ黒に汚れたユニホームが、一つのプレーにこだわった姿を現している。
4点をリードした五回。二死まで簡単にこぎ着けたが、ピンチが訪れた。2連打で一、二塁。3番渡部の打球は右翼佐藤の右を襲った。佐藤は捕球するとすぐに一塁の谷口へ。谷口もホームへ好返球。捕手山本は「絶対にいいボールが来る気がした」と本塁突入を阻止して、追い上げる浦和学院の勢いをそいだ。
2年前の秋季関東高校大会準々決勝。同じような場面で佐藤からボールを受けた谷口が悪送球して失点。一球を大切にできなかったことが敗戦につながり、甲子園の道を絶たれた。
主将の佐藤は「一回、一回に攻めの守りの姿勢を崩さず、集中力を切らさなかった」とチームの成長を感じ取っている。
今までなら勝負どころの弱さが結果に出ていた。2年連続で秋季関東高校大会は8強止まり。さらに春季県大会では栄東に失策から敗れ、春季関東高校大会出場を逃した。どこかで、一球に対する気持ちが欠けていた。
戸栗監督は「泥臭いのがうちのスタイル。形うんぬんより、よく守り切った」と選手たちを評価した。優勝候補を倒し、この一戦で手にしたものは計り知れない。埼玉栄が高校野球の原点を見せた。
常勝の難しさ実感
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| 浦和学院−埼玉栄 6回裏浦和学院無死、前野のバットが空を切って三振に倒れる。投手木村、捕手山本 |
完敗だった。4点を追う九回の攻撃もあっさり終わり、浦和学院が力負けした。
満を持していた背番号1の井上が先発。しかしこれが裏目に出た。二回に3ランを浴び、埼玉栄を勢いづかせた。準々決勝までの流れなら、先発は村尾。この日も継投した三回以降、1失点に抑えた。
森監督は「井上の状態が良くなってきていたし、連戦だったのでいけるところまで投げさせようと思った」と説明する。4回戦以降、ほとんど出番のなかった井上の意欲を買った。「競争してきた2人の力をうまく出せれば」。これが森監督の優しさ。だが今回は失敗だった。
埼玉栄の6安打を上回る8安打したが、わずか1得点。4点を先制された二回に1点を返し、さらに一死一、三塁としたが後続が凡退した。五回には二死から3連打し、二塁走者が一気に本塁を突いたものの、埼玉栄の完ぺきな中継で加点できず、反撃のきっかけを絶たれた。
すすり泣くナインを見つめながら森監督は、「続けて勝つことは難しい」とつぶやく。夏の連覇は鈴木健(ヤクルト)を擁した浦和学院が1986、87年に達成して以来、どこも実現していない。森監督も今回が5度目の挑戦だったが、またもはね返された。
主将の今成は目を真っ赤にしながら「連覇の重圧はなかった」と強がり、「この悔しさは後輩に託す」と言葉をつないだ。
打倒ウラガク。これからも浦和学院はこの宿命と戦っていく。埼玉県史上初の夏―春―夏の3季連続甲子園出場は、どこが、いつ達成するのか。
強気の投球でナインも奮起
○埼玉栄 九回を三者凡退に打ち取ると、エース木村はマウンドで大きく跳びはね、両手を青空に突き上げた。強打の浦和学院を相手に1失点の完投。「向こうは甲子園常連のAシード。受けに回らず、攻めていくことだけ考えていた」と強気で投げ抜いた。
連投の疲れもあり「スライダーの切れはいまひとつ」と、調子は万全ではなかった。だが捕手の山本を信じてスライダーを低めに、直球をコーナーに投げ分けた。戦う気持ちはナインにも伝わった。五回二死一、二塁からの右前打を浴びたが、好連係で走者を本塁で刺した。木村は「あれで自分もチームも乗っていけた」と堅守に感謝した。
投球数は143球で前日の準々決勝と合わせて241球となった。決勝は3連投のマウンドになる。「不安は全くない。絶対投げたい。思い切っていくだけ」。鋭い目つきで言い放った。
負けられない気持ち一つに
○埼玉栄 五回二死二塁から中前タイムリーを放ち、貴重な追加点をもたらした主砲三戸。昨春、昨秋と連敗した浦和学院を倒しての決勝進出に「何度も同じ相手に負けられなかった。全員が気持ちを一つに戦えた」と感極まり涙ぐんだ。
凡打に終わった一回の攻撃を反省し、「中途半端は悔いが残る。来た球を思い切って振ろう」と誓い五回の打席に入った。カウント1―1から内角低めの直球をフルスイング。「大きな1点になった」と役割を果たし胸を張った。
八回一死から渡部の痛烈な一撃をダイビングキャッチする好守も見せた。「甲子園へあと一つ。今まで通りの全員野球で最後の山を乗り越える」と再び戦闘モードに切り替えた。
直球見逃し三振悔し涙の主砲
●浦和学院 「4番として打席に立たせてもらっていたのに、チームに貢献できなかった」。前野は一回、二死一塁で凡退した1打席目を悔やんだ。どうしても欲しい先制点を目の前に、見逃し三振。真っ向勝負の木村の直球に「手が出なかった」と、涙を抑えた。
ようやく手にした4番。直球が速いという意識があるからこそ、「直球を打ち返すことでチームを引っ張りたかった」と前野。しかし安打は八回の1本に抑えられ、呼応するように打線はつながりを欠いた。
アジアAAA選手権代表候補になるなど、選抜大会でも活躍した前野。「春と夏は違う。昨夏先輩に連れて行ってもらった大会に、自分たちの力で行きたかった」と目を腫らしていた。
きずな学んだ2人のエース
見事な火消し役敗戦にも涙なし
●浦和学院 三回から井上を継投した村尾。五回に1点を奪われたが、被安打は散発で3本だけと見事な火消し役を務めた。村尾は「大会中で、きょうは一番の出来。気持ちを前面に出して投げることができた」と涙はなかった。
五回一死から四球で歩かせた走者を、適時打で生還させた1失点が唯一の反省点。緩急を織り交ぜた投球で7個の三振を奪った。
これまで得点後に連打される癖があり、森監督から精神面での課題を指摘されてきた。九回、村尾は「気持ちを静めよう」と、マウンド上で空を見上げた。森監督は「今大会は村尾の踏ん張りで勝ち上がれた。先制された苦しい状況でよく投げ切ってくれた」と褒めていた。
試練越え登板も声を詰まらせ涙
●浦和学院 エース井上が二回につかまった。4失点してこの回で降板した右腕は、「万全の状態だったのに」と声を詰まらせた。
先頭の木村を四球で歩かせると、一死二塁から谷口に内角スライダーを中前適時打された。「失投じゃないから仕方ない」と気を取り直したものの、二死一、二塁で高橋に右越え3点本塁打を浴びた。カウント0―2からの真ん中高め直球だった。井上は「外角を狙ったけれど、僕の制球ミス」とうなだれた。
選抜大会の背番号1も、「気持ちが浮いている」(森監督)と、春季県大会は登板できなかった。試練を乗り越え再びつかんだエースの称号。井上は「仲間のきずなとか、大事なものを学べた」と涙をふいた。
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