WEB埼玉

2005年7月25日(月)
 

劇的決勝打 輝く17番
春日部共栄6-3滑川総合

 
春日部共栄−滑川総合 10回表春日部共栄1死満塁、呉屋が右中間に決勝タイムリー三塁打を放つ。捕手泉谷=県営大宮

 俊足を買われ、ぎりぎりでメンバー入りした春日部共栄の呉屋がその足とバットで、チームに劇的な勝利をもたらした。

 2点を追う九回に代走で出場。同点に追い付いた裏の守りで左翼に入ると、滑川総合・藤本の左中間に飛んだ鋭い打球を「迷いはなかった。絶対取る」と俊足を飛ばしてダイビングキャッチ。抜ければ長打の当たりをもぎ取った。「まさかあんなことをするとは」と本多監督を驚かせた好守で、流れを一気に引き寄せた。

 十回一死満塁の好機。本来は4番の打順に背番号17が立った。「絶対、自分で決める」。気迫を込めたスイングで右中間を破る走者一掃の三塁打。三塁上で右の拳を突き上げ、雄たけびを上げた。

 沖縄県石垣島の出身。準々決勝には両親が初めて応援にやって来る。「きょうは負けられなかった。成長した姿を見せたい」。泥だらけの顔で恥ずかしそうに笑った。

ここでは終われない
延長10回の大逆転

 春日部共栄が追い詰められた。2点を追う九回、本多監督は選手を集めて言った。「開き直れ。こういう場面で力を出すために、練習をやってきたんだろう」。土壇場でナインは持てる力を発揮した。

 この回、1点を返しなお一死二塁の好機に渡辺。七回の打席は変化球に手が出ず見逃しの三振だった。「だからこそ、あえて変化球を狙った」。カウント1―2から4球目。待っていたスライダーを右前にはじき返し、同点に追い付いた。

 「前の打席でやられていたから必ず打つつもりだった。こんなところで終わるチームじゃない」と渡辺。いったん流れを引き寄せれば強い。十回にあっさり3点を奪い勝負を決めた。

 苦しい試合だった。滑川総合の4投手の継投にほんろうされ、八回までわずか1点。「投手の代わりばなをたたけず見ていた。慎重になり過ぎていた」と本多監督。

 じりじりする展開の中、エース大竹を中心に守りが踏ん張る。集中力を切らさず、失点はいずれも最少の1点。九回には呉屋の好守がチームを勢いづけ、十回の3点が生まれた。

 同点のきっかけは滑川総合の遊撃手のエラーから。決勝打の呉屋は九回の代走要員。守備力の差、控えを含めた総合力の差が最後にものをいった。

 1993年の夏に全国準優勝したチームも、ここ7年は甲子園から遠ざかっている。代わりに同じ私学の浦和学院と聖望学園の活躍が目につく。東部地区を代表する強豪として忸怩(じくじ)たる思いを味わってきたはずだ。「夢でしかなかった甲子園が近づいてきた」と渡辺。大きい大きい1勝だ。

ナインを信じ全部投げ切る

 ○春日部共栄 冷静なエース大竹が、珍しく少し興奮していた。「全部勝って甲子園に行きます。自分が全部投げ切ります」

 苦しい試合だった。味方はなかなか点を取ってくれない。それでも気持ちを切らすことはなかった。一、三、六回に失点したもののいずれも最少の1点。大量点を与えなかったことが、九回の同点、そして十回の逆転を呼んだ。

 特に苦しかったのは六回。1点を許しなおも一死二、三塁のピンチ。「甲子園に行くためには負けられない」。ここも落ち着いて後続を断った。「気持ちで相手より上だった」と言う。

 「辛抱強く投げていれば必ず逆転してくれる。自分にもチームにも自信がついた」と胸を張った。

負けてもともと
最後に勝ち意識

 ●滑川総合 六回、中越え二塁打で貴重な追加点の足掛かりをつくった木村。「甘い球が来たら絶対に打ってやる」。はじき返した外角の直球は最も得意なコースだった。

 三回にも春日部共栄のエース大竹の速球を中前へ運び、この日は2安打。「自分には打ちやすかった」だけに「もう少し打ちたかった」と振り返る。

 シード校をあと一歩のところまで追い詰めながらも涙をのんだ。「途中までは『負けてもともと』という気持ちで思い切りやれていたのが、終盤になって勝ちを意識してしまった」

 最後の打席は遊ゴロ。だが、悔いはない。「自分のバッティングはできたと思う」。言い聞かせるように話した。

春日部共栄−滑川総合 9回表春日部共栄1死二塁、タイムリーを放った渡辺が送球間に二塁を狙うがタッチアウト。ベースカバーは遊撃手安藤祐=県営大宮

わずかな差
試練は続く

 あとアウト三つだった。しかし2点リードで迎えた九回の守り。滑川総合は見えない重圧に縛られていた。

 黒沢が先頭を四球で歩かせる。嫌な予感が漂う。その後、大事なところで今大会初失策。連係プレーもぎこちない。2度あった併殺機も、勝機も逃してしまう。1点差。

 「足を動かせ」「声を出せ」。ベンチから大声で指示。ナインの耳には届いていたが、体が言うことを聞かない。一、二塁間を襲った同点打。一塁手岩田晃は「足が動かなかった」とグラブに当てるのが精いっぱいだった。

 これで流れは春日部共栄。延長十回に勝負は決まった。目を真っ赤に腫らした安藤祐は「みんな緊張して無理やり足を動かそうとしていた。春日部共栄に勝てる。そう意識したところで自分たちの甘さが出た」と悔やむ。

 滑川時代の4年前、春日部共栄には4―1で迎えた九回裏に逆転サヨナラ負けを喫した苦い経験がある。それ以来、「強豪校とのほんのわずかな差を埋めるため、勝ち切るための力を身に付けるためにやってきた」と滝島監督。今チームは県内外の実力チームとの練習試合を140試合もこなしてきた。

 八回まで完ぺきな試合運びだった。しかしまたも勝てなかった。「力は身に付いていると信じていた。きょう負けるまでは」と同監督。試練の一年が再び始まる。

 
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