彩夏の軌跡 埼玉高校総体を終えて

【上】埼玉色

国体の財産生かす

 

高校生の熱のこもった演技も光り、好評だった埼玉総体の総合開会式=7月28日、さいたまスーパーアリーナ

 ▼人材、施設がフル稼働

 「運営準備が行き届いている」「スポーツ環境が整っている」。埼玉の印象について来県した選手、監督の多くが口にしたのは温かい出迎えと施設の充実だった。

 さいたまスーパーアリーナで行われた総合開会式が象徴的だった。夏場の体調管理などに配慮した屋内開催で、屋外に匹敵する約五千人の選手団を集めたのは総体史上初。「施設の大きさにびっくり」「高校生の公開演技が素晴らしかった」。国際規模の施設を有する埼玉での開会式は、出迎えた高校生たちの好演技も光り、好評だった。

 期間中は大きな事故もトラブルもなかった。県高校総体推進室の久保正美室長は「各競技で運営ノウハウを知る人材が活躍してくれた。施設でも運営面でも四年前の埼玉国体の財産が生きた」と話す。一方で競泳・飛び込み会場の川口青木町公園プールは屋外のため初日は豪雨にたたられた。関係者からは、あらためて屋内五十メートルプール建設の要望が挙がった。

 ▼実を結んだ熱中症対策

 真夏の高校総体で関係者が最も気を使ったのは熱中症対策。昨夏の佐賀総体では期間中、計三十四人(選手、役員、観客含む)が熱中症で病院に搬送されたが、埼玉総体は十六人と半分以下に抑えられた。

 昨夏、熊谷で国内最高気温の四〇・九度を記録。「埼玉は暑い」というイメージが浸透した。来県する選手団それぞれの予防策も実ったが「関係者が危機感を持って対策に力を入れてくれた」(県高校総体推進室)と言うように各会場地の工夫も見逃せない。

 会場地では例年の総体以上に水分補給所を増やし、熱中症予防をPR。陸上会場の熊谷では「冷却ミスト」を初めてトラックに置いたほか、気象予報士と連携しながら熱中症指標計と警告看板を設置。剣道会場の越谷、ソフトボール会場の鴻巣と坂戸などでは炎天下で働く補助員や観客向けの「ミスト扇風機」を稼働させるなど、会場自治体独自の取り組みも一役買った。

 ▼ニーズ高い動画配信

 埼玉総体の目玉事業として実施された動画配信。全三十二競技の全日程がインターネットを通じて全国発信され、アクセス数は二十日までで約七百万件に上った。テレビ放映の少ない高校総体だが、潜在的な映像ニーズの高さを物語る結果となった。

 高校生たちが競技を撮影し、サポートするNPO法人「埼玉総体動画配信支援センター」(庄司周代表)が配信。原則録画だが、ほとんどが試合後、一時間以内に観覧でき、画像の鮮明度(768キロBPS)も好評だった。

 庄司代表は「反響の大きさにびっくりした。全国から約四百件のメールが寄せられ、ほとんどが『早く映してほしい』といった要望と感謝の内容。カメラを回す高校生たちの情熱にも感動した」と話す。

 動画配信が初導入された前回の佐賀総体では約一億八千万円の県費で運営されたのに対し、埼玉は公費を使わず企業からの協賛金(約一億円)で運営した。

 大会を主催する全国高校体育連盟は今月六日に開いた「第一回動画配信推進プロジェクト会議」で、来夏以降の高校総体も民間の活力と資金を生かした「埼玉方式」をベースに動画配信を継続していくことを確認した。ニーズが高ければ自然とスポンサーも増えていく。アマスポーツの運営、発展にも商業資本が欠かせない時代の流れの中で、スポーツメディアの新たな方向性を示す大会ともなった。

(2008.08.22付掲載)

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